平成30年5月29日(火)

 今朝の閣議では,法務省案件として,主意書に対する答弁書が1件ありました。

難民問題に関する質疑について

【記者】
 難民問題についてお伺いします。今年1月から3月に日本で難民申請した外国人が速報値で3,015人となりました。8年ぶりの減少に転じた理由について,大臣のお考えをお聞かせください。
 また,就労目的の偽装申請を抑止するための運用策が効果を上げているとの見方もありますが,これらの取組についてのお考えも,併せてお聞かせください。

【大臣】
 本年1月から3月までの第1四半期の難民認定申請数は,3,015人であり,平成29年同時期(3,479人)と比べ,464人(約13パーセント)の減少となっています。これは第1四半期としては,平成22年以降8年振りの減少となっています。
 難民認定制度の運用の更なる見直しを実施したのが1月15日ですので,それ以来3月末までの間の平日1日あたりの平均難民認定申請数は,43.1人であり,平成29年1年間の平日1日あたりの平均難民認定申請数79.8人と比べると,約46パーセント減少している状況です。
 本年1月15日に運用を見直してから3月末までの短期間の状況であり,施策の効果を評価するにはまだ早いと考えていますが,フィリピン,ベトナム及びスリランカといった大量の難民・避難民を生じさせるような事情のない国からの申請が,約60パーセントから70パーセント減と大幅に減少しています。
 また,在留資格「留学」及び「技能実習」からの申請も,それぞれ約84パーセント,約56パーセントと大幅に減少しています。
 これまでのところ,運用の更なる見直しの周知等により,就労等を目的とする濫用・誤用的な申請が一定程度抑制されているものと考えています。
 他方,運用の更なる見直しの目的である真に庇護を必要とする者への迅速な保護にも努めており,難民認定数は,昨年同期の1人から4人に増えています。
 法務省としては,引き続き運用の更なる見直しの周知に努めるとともに,難民認定申請数の推移等を注視し,濫用・誤用的な申請を抑止し,難民認定の迅速・適正化を推進し,真に庇護を必要とする者への迅速な保護に努めてまいりたいと考えています。
 

被退去強制者の仮放免に関する質疑について

【記者】
 先日,茨城県牛久市にある東日本入国管理センターにおいて,報道関係者による視察が行われました。退去強制事由のある外国人の収容に対しては,人権侵害の問題があるとの指摘が一部でなされていると思いますが,大臣は,仮放免を積極的に認めることがこの問題の解決になるとお考えでしょうか。

【大臣】
 最近,我が国での稼働,あるいは定住を意図して,自国への送還を頑なに拒み続ける送還忌避者が相当数存在しています。そこで,送還忌避の問題に日々苦悩している入管収容施設の実態を御理解いただくため,先週5月23日,東日本入国管理センターの施設を公開いたしました。面会室,また医療設備だけでなく,居室の周辺を巡りながら被収容者の日常の生活状況についてプレスの皆様に御覧いただいたのは今回が初めてのことです。
 全国の入管収容施設に現に収容されている者は,在留資格を有しないなど法律上の在留要件を満たさず,あるいは刑法上の罪を犯したことにより,我が国での在留が好ましくないと判断された者であり,我が国から出身国に向けて速やかに送還することで収容を終わらせることが肝要であると考えています。
 特に,昨年中に退去強制手続を受けた1万3千人余りのうち470名は,刑事罰を科された者であって,その放免は社会にとって決して好ましいものではなく,一刻も早い送還を期すべきであり,出身国政府とも交渉を行うなど,速やかな送還に努めているところです。また,昨年末現在で収容されている者の約61パーセント及び退去強制令書発付後に仮放免を受けている者の約53パーセントが難民認定申請を行っています。彼らはいったん難民認定申請をすれば送還が止められることを承知の上で,退去強制処分が決まった後になって難民認定申請を行う者もおり,個人的事情や雑ぱくとした生活不安を申し述べるなど明らかに難民に該当しない申立てが散見されています。
 そもそも,仮放免という制度は,我が国から退去することが既に決定している者について,あくまで暫定的な措置として訴訟継続中など送還の見込みが立たないような場合にやむなく認めているものです。明らかにこれは在留資格の付与とは性質を異にするものです。
 送還を頑なに忌避する者を安易に仮放免することとなれば,新たな不法就労問題を引き起こすのみならず,被退去強制者の逃亡を防止しきれず,退去強制とりわけ送還業務に著しい支障を来します。そして,出入国管理を通じた我が国の安全安心社会の維持にとっても,ゆゆしき問題に発展することになるとも考えています。現に,仮放免中の者が殺人,殺人未遂又は強盗致傷の容疑で警察に逮捕される案件が昨年中に3件発生しており,このほか,薬物事犯,傷害,窃盗などの容疑で逮捕される事案も生じている中において,仮放免の是非を慎重に判断するということについては,むしろ当然のことと考えています。
 

(以上)