平成30年6月15日(金)

 今朝の閣議において,「平成29年度人権教育及び人権啓発施策」が閣議決定されました。また,法務省案件として,主意書に対する答弁書が1件ありました。
 私から2件御報告があります。まず,本年4月8日,松山刑務所大井造船作業場において,逃走事件を発生させ,23日間という長きにわたり,地域住民の皆様,企業・学校関係者を始め多くの皆様,国民の皆様に多大な御不安を与え,御迷惑をお掛けしたことを改めて心からお詫び申し上げます。
 この度,「松山刑務所大井造船作業場からの逃走事故を契機とした開放的施設における保安警備・処遇検討委員会」から,検討結果の報告を受けました。
 5月1日及び2日に現地を訪問した際,地域住民の皆様から,逃走事件により,毎日不安を抱えながら生活していたこと,生活全般が極めて不便な状態に陥っていたことなどを伺い,逃走事件を発生させたことの重大さを痛感するとともに,再発防止を強く求める皆様の声を重く受け止めました。また,大井造船作業場は,長い間,企業の御協力と地域の皆様の御支援を頂きながら運営されてきた施設であり,逃走事件により御迷惑をお掛けしたにもかかわらず,大変有り難いことに,多くの皆様から作業場の存続を望む声を頂きました。
 こうした皆様の声に十分お応えできるよう,検討委員会で,逃走事件の原因や再発防止策を含め,開放的施設における保安警備や処遇の在り方について,検証・検討を重ねてまいりました。取りまとめた再発防止策については,地域の自治体や住民の皆様に説明させていただき,皆様から御理解を頂いた上で,本日,公表するものです。
 大井造船作業場については,今月中を目途に,松山刑務所や今治拘置支所に収容しつつ,昼間のみ就業させる形で再開し,その後,年内には,警備システム等を整備した上で寮の使用を再開したいと考えています。
 開放的施設はもとより刑事施設の運営に当たっては,地域の自治体や住民の皆様の御理解や支えが不可欠です。地域の自治体や住民の皆様から頂いた御意見や御要望を深く受け止め,矯正局はもとより法務省一丸となって,開放的施設を含めた刑事施設の適切な運営に全力で取り組んでまいる所存です。
 次に,本日の閣議で,「平成29年度人権教育及び人権啓発施策」,いわゆる人権教育・啓発白書を国会に報告することについて,決定されました。
 本報告は,政府が講じた人権教育・啓発に関する施策についての年次報告であり,これを共管する法務省と文部科学省において,関係各府省庁の御協力を頂き,様々な人権課題の状況やそれらに対する取組等を取りまとめて作成したものです。
 今回の報告において注目すべき点は,平成29年10月に実施された「人権擁護に関する世論調査」に関する特集記事を掲載したことです。この調査は平成24年以来5年ぶりとなりますが,前回調査と比較すると,関心のある人権課題について,「障害のある人」,「インターネットによる人権侵害」と回答した方が大きく増加している点が目を引きます。
 世論調査以外の本報告の特色としては,近年特に注目を浴びている人権課題に関して,いわゆるヘイトスピーチ等の「外国人の人権問題」や「性的指向及び性自認を理由とする偏見や差別の問題」に対する取組などについて詳細に記述していることが挙げられます。
 さて,本年は,世界人権宣言の採択及び我が国の人権擁護委員制度の創設から70周年の記念の年に当たります。さらに,東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を2年後に控え,社会全体で人権問題に取り組もうとする機運が高まりつつあります。
 法務省の人権擁護機関としては,このような機会を契機として,誰もが生き生きと暮らすことができる社会,すなわち持続可能な開発目標(SDGs)の理念としてうたわれている「誰一人取り残さない」社会を実現するため,なお一層の取組強化に努めてまいりたいと考えています。
 報道機関の皆様方には,これを機に,国民の人権意識の高揚を図ることへの御協力をお願いします。
 

テロ等準備罪処罰法成立から1年が経過したことに関する質疑

【記者】
 テロ等準備罪処罰法の成立から,1年が経ちました。大臣の御所感と運用状況をお教えください。

【大臣】
 いわゆるテロ等準備罪処罰法は,国際組織犯罪防止条約(TOC条約)の国内担保法であり,昨年6月15日に成立し,同年7月11日に施行されたものです。
 テロ等準備罪の捜査・訴追については,関係機関において,関係法令にのっとって適正に行われるものと承知しているところであり,テロ等準備罪処罰法施行後,テロ等準備罪の検察当局における受理件数については,現時点で把握しているところは,0件です。
 我が国は,テロ等準備罪処罰法の成立を受けて,TOC条約を締結しました。これにより,これまで有効な条約がないため協力を求められなかった,又は国際礼譲に基づく協力しか求められなかった多数の国や地域との間で,テロを含む国際組織犯罪について,条約に基づく国際捜査共助や逃亡犯罪人引渡しを相互に求められるようになった上,情報収集において,国際社会とより緊密に連携することが可能となりました。
 このようにテロ等準備罪処罰法の制定については,大変意義があったものと考えています。
 テロを含む組織犯罪は国境を越えて行われることが少なくありません。外国に存在する証拠を取得するための捜査手法として,国際的な捜査共助等を活用する必要性が高いことなどから,このような犯罪への対処については,国際協力が重要であると考えています。
 今後とも,このような犯罪への対処について,国際協力をしっかりと充実してまいりたいと思います。

(以上)