平成30年6月29日(金)

 今朝の閣議では,法務省案件はありませんでした。
 私から4件報告があります。第1に,第68回“社会を明るくする運動”が「更生保護の日」である7月1日から1か月間を強調月間として,全国で実施されます。
 本運動は,犯罪や非行のない安全・安心な社会を実現するためには,過ちを犯した人の立ち直りを地域で支えることが重要であることを多くの国民の皆様に御理解いただき,協力の輪を広げていくことを目的としております。
 また,平成28年12月に成立した「再犯の防止等の推進に関する法律」におきましては,7月を「再犯防止啓発月間」と定めており,国民の間に広く再犯の防止等についての御関心と御理解を深めることとしています。
 さらに,昨年12月に閣議決定した「再犯防止推進計画」においても,重点課題の一つに広報・啓発活動の推進等を掲げています。
 「推進計画元年」に当たる本年は極めて重要な1年であり,法務省としては,こうした趣旨を踏まえつつ,犯罪のない幸福な社会づくりに取り組む決意のしるしである「幸福(しあわせ)の黄色い羽根」のもと,“社会を明るくする運動”と再犯の防止に向けた取組について,国民の皆様の一層の御理解と御協力を呼び掛けてまいります。
 本運動の強調月間及び「再犯防止啓発月間」の開始に当たり,7月2日には,東京・有楽町駅前広場において,広報・啓発行事「立ち直りフェスティバル」を開催します。
 本イベントでは,本運動のフラッグアーティストである谷村新司さんをお招きしてトークショー等を行い,御参加の皆様に,犯罪や非行をした人の立ち直り支援について御理解を深めていただくこととしています。
 多くの皆様に有楽町駅前広場にお越しいただき,イベントに御参加いただければと考えています。
 本年も,犯罪や非行のない社会の実現に向けた広報・啓発活動が全国各地でより一層活発に行われるよう,御支援と御協力,そして積極的な御参加をお願いいたします。
 第2に,6月25日に東京入国管理局を視察し,職員が日々職務に精励し,また,真剣に訓練に取り組んでいる状況を確認しました。今般の視察結果を踏まえて特に取り組んでもらいたい事項として,入国管理局に対して次のような指示をしました。
 まず,受刑者の早期送還の問題です。刑事犯罪者について,送還忌避を未然に防止し早期の送還を図る必要がある場合に,刑事施設の協力を得て,その在監中に違反調査及び違反審判の手続を全て済ませた上で,刑務所を出所後空港に直行し送還するための必要な方策について検討すること。
 2点目として,家族面会の積極化です。現に収容されている被退去強制者について,その家族,特に未成年のお子さんが面会を希望する際,「しきり」のない部屋で会話を交わすことができるよう,また,男女別のブロックに収容されている夫婦が希望に応じ面会できるよう,最大限配慮すること。
 3点目として,身柄引取りの交渉です。被退去強制者の身柄引取りに関して,自国の法制度を理由にこれを拒んでいる出身国政府や大使館との交渉につき進捗が図られていないものについては,レベルを更に高いものに上げるなどして,今後ともしっかりと取り組んでいくこと。
最後に4点目として,在留手続オンライン制度の検討,加速化です。在留手続のために来庁する申請者等の待ち時間緩和のため,オンライン申請制度の準備を加速するとともに,同制度の設計に当たっては,全国に一つの審査拠点を作る等,適正で機能的なものとする方向で検討を進めること。
 私としては,新たな外国人材の受入れに関して政府部内での検討が進められている中,入管の現場の体制強化や運用の見直しを通じて様々な課題を克服し,我が国に入国・在留する外国人が円滑に共生できる社会の実現に結びつけていきたいと考えています。
 第3に,日本時間の本日未明,米国国務省が,平成29年分の人身取引報告書を発表しました。
 その報告書において,我が国は,第1ランク,すなわち「基準を満たしている国」に分類されました。平成13年以降発表されてきた同報告書において,我が国が第1ランクになったのは初めてのことです。
 我が国は,これまでも,政府一丸となって人身取引に対する取組を進めてきたところですが,特に昨年1年間を振り返ると,当省所管事項に関連する分野に限っても大きな進展がありました。
 まず,我が国は,これまで国際組織犯罪防止条約,いわゆるTOC条約に加入できていなかったことから,その附属議定書である人身取引議定書にも加入できていなかったのですが,昨年のテロ等準備罪処罰法の成立を受け,TOC条約及び人身取引議定書に加入することができ,人身取引対策においても大きな前進となりました。
 また,同様に,昨年には,技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図るためのいわゆる技能実習法を施行するという点でも,大きな進展がありました。
 今年初めて我が国が第1ランクに分類されたのは,このような我が国の人身取引に対する取組が正当に理解された結果であると認識しています。
 今後の人身取引対策としては,検察当局において,関係省庁と連携しながら,人身取引事犯に対し,関係法令を積極的に適用し,厳正な科刑の実現に努めていくものと承知しています。
 また,入国管理当局においても,人身取引の防止に努めるとともに,被害者について,その法的地位の安定化を図っていくものと承知しています。
 法務省としては,引き続き,TOC条約や人身取引議定書の枠組みを踏まえ,関係省庁と連携しつつ,こうした取組を一層推し進め,国際的な問題である人身取引対策に貢献していく所存です。
 第4に,本年は,明治元年から150年目を迎えた節目の年に当たります。
 この「明治150年」をきっかけとして,我が国の近代国家の建設に向けた取組や先人達の業績を次世代にしっかりと遺していくとともに,開国の精神に学び,日本の強みを再認識することは,今後の我が国のあるべき姿を考える上で,大変重要であると考えています。
 そこで,現在,政府全体として「明治150年」関連施策を推進していますが,法務省では,赤れんが棟及び旧奈良監獄において様々な企画を予定しています。本日は,そのうち,赤れんが棟内での特集展示について,御紹介します。
 赤れんが棟は,近代国家としての体制を整えるものとして,明治政府により建てられた残存する唯一の西洋式の官庁建築物です。
 その赤れんが棟内の法務史料展示室・メッセージギャラリーにおいて,このたび,「司法の近代化」及び「建築の近代化」に焦点を当て,明治期の貴重な書物等を展示した「明治150年特集展示」を開催いたします。
 この特集展示は,7月2日(月)正午から一般公開しますので,是非多くの方々に御来場いただき,法や司法が,近代国家として備えるべき基本的なインフラであること,そして,赤れんが棟の有する歴史とその建築美を実感していただければと考えています。

ハーグ条約実施法見直しに関する質疑について

【記者】
 今日,民事執行法部会が開かれますが,ハーグ条約実施法の見直しに当たって,子どもの利益を確保する上でどういった点に留意するお考えかお聞かせください。

【大臣】
 一般に,子の引渡しの強制執行に関する規律については,強制執行の実効性を確保するとともに,子どもの心身の負担に配慮する,そして子の利益の保護を図るという観点が重要であると考えています。
 法制審議会民事執行法部会では,現在,このような観点から調査審議が進められているところです。
 具体的には,強制執行をするための要件として,子と債務者が共にいること(同時存在)を不要とする一方で,債務者の不在により,子が執行の現場で事態を飲み込むことができずに恐怖や混乱に陥るといったことのないように,債権者の出頭を原則として必要とするといった方向で検討がされているものと承知しています。
 ハーグ条約実施法についても同様に,子の利益の保護を図る観点を踏まえた検討をする必要があり,具体的には,債権者の出頭を原則として必要とすることにより,子の利益の保護が図られることになるかといった点が,検討の対象となるものと理解しているところです。
 このように,子の引渡しや返還をめぐる強制執行制度の見直しは非常に重要な課題であり,強制執行の実効性を確保しながら,子の心身の負担に最大限配慮し,子の利益の保護に資する規律が設けられるよう,同部会において充実した調査審議がされることを期待しているところです。

2018FIFAワールドカップに関する質疑について

【記者】
 大臣は昨日のワールドカップは御覧になりましたか。

【大臣】
 もちろん見ました。

【記者】
 日本が決勝トーナメント進出を決めたことと,最後寂しい雰囲気のなか終わったと思うのですが,日本の戦いぶりをどう御覧になったのかをお聞かせください。

【大臣】
 昨日夜遅くに,大変期待されていた,第1次リーグから決勝トーナメントへ上がることができるかどうかという大変重要な戦いがあり,私を含め全国の多くの皆さんが,日本代表を見守って,応援していました。惜しくもポーランドに対して0対1で敗れたわけですが,結果としてグループ2位で決勝トーナメントに進出することになったわけです。
 昨日,私もテレビで観戦していて,テレビの中ではブーイングの音声があまりなく,その印象はあまり強くなかったのですが,現場ではかなり大きなブーイングがあったようです。そういう中にあって,次の決勝トーナメントに向けて,色々と作戦を練りながら冷静に,そして思いを一身に背負いながらの戦いでしたので,選手達は厳しい中であっても1つになって戦い抜いたのではないかと思います。
 今回,2大会ぶりの決勝トーナメント出場,ベスト16以上ということになりますが,リーグでの3回の戦いの結果として,今回の決勝トーナメントへの進出ということになります。1回目の戦いから国民の皆さんもそれぞれ記憶にとどめている場面もありますし,それぞれの選手へのエールの送り方についも,大変温かく,また,一緒になって戦っている姿もありましたので,是非そういう声援を一身に背負ってチームとしての誇りを持って戦っていただきたいと思っています。

人身取引報告書に関する質疑について

【記者】
 先ほどおっしゃっていた,アメリカ国務省から発表された平成29年分の人身取引報告書において,日本が初めて第1ランクに分類されたとのことですが,それはどうしてなのか,もう少し詳しく教えてください。

【大臣】
 そもそもこの米国国務省が作成している人身取引報告書,その中におけるランク付けは,アメリカが独自の立場に基づいて作成したものです。その意味で,法務省として,ランク付けがどういう理由で変更されたのか承知していませんし,またそれについてお答えをする立場にはないという前提で申し上げたいと思います。
 先ほど申し上げたとおり,報告書に関しては多年にわたり指摘を受けてまいりました。その中で特に,実現することができなかったTOC条約及び人身取引議定書につき,テロ等準備罪処罰法の成立・施行より,それぞれ締結に至りました。また,報告書においては,労働搾取目的の人身取引が行われている可能性を指摘されてた技能実習制度について,その適正な実施及び技能実習生の保護を図るためのいわゆる技能実習法の施行に至ったこと,こういったことが私どもの直近の取組の非常に大きな要素として正当に理解されたのではないかと考えています。今般,第1ランクになったことについても,そうした評価があったのではないかと考えています。

東京入国管理局視察に関する質疑について

【記者】
 先ほど入管の課題について4点大臣が述べられていたと思うのですが,東京入管の視察とこうした指示に至るまでの関連性を教えてください。

【大臣】
 まず,私が6月25日の午前中に東京入国管理局を視察しました。私自身は前回の大臣の時に同じ施設を視察していますが,その時期と今回の視察との間に少し時間がありますので,その比較も込めて,どのような変化が起きているのかを視察するというのが私の個人的な視点でした。また,同時に新たな場面も視察現場として見ることができ,そこで感じたことについても率直に現場の皆さんと意見交換をする機会を得たということは大変貴重な機会であったと思っています。
 まず,送還の忌避に関する問題ですが,刑事罰を受けたにもかかわらず頑なに送還を忌避する者が,処遇業務において大変な負担になっている状況です。特に重い有罪判決を受けて退去強制が決定している者の送還促進を図ると共に,送還時の身柄引渡しに難色を示している出身国の政府との交渉についても更に進めていく必要があるのではないかと感じた次第です。
 それから面会の場面ですが,面会状況を確認したところ,家族の面会というのは1つの人権ですので,こういったことについて,特に親子関係や夫婦関係,特に女性と男性のフロアが違いますので,離ればなれになっている部分の面会については,その方法について,その心情にしっかりと寄り添う形で対応する必要があるのではないかと感じた次第です。
 また,最後ですが,在留審査の手続,ここは前回もそうでしたが非常に混み合っている状態です。週の内に違いがあるのかと尋ねると,必ずしも月曜日は空いていて火曜日は混んでいるということではなく,慢性的に混雑しているということ,これが年中続いているということで,こうした状況を改善していく効果的な仕組みとしては,オンライン申請が重要になります。全国各地での在留審査に当たっても,これを一元的にすることで公平性と迅速性が図れるという点もありますので,この点について,システムの設計手続も踏まえなければいけないし,また,予算の措置も大変重要であり,今の入国管理局の実情を考えると極めてスピード感を持って取り組むべき課題であると考えた次第です。
 諸々のことを現場の中で色々やりとりした結果,今回4点にまとめて更に取組に力を入れていくよう促したところです。

取り消されているはずの運転免許証を持ったまま受刑者が出所した疑い

【記者】
 取り消されているはずの運転免許証を持ったまま受刑者が出所していた疑いが出ている問題でお尋ねします。運転免許の管理は警察の所管ではありますが,刑事施設においても受刑者の免許の状況について把握し,警察との連携を図る等の対応を執ることも再発防止に必要なのではないかと考えます。特に交通受刑者の更生という観点から,交通刑務所はその必要が一層大きいと思いますが,大臣のお考えをお聞かせください。

【大臣】
 御指摘の報道がなされていることは承知しています。今,事実関係を確認しているところであると承知しており,現時点において所見を述べることは,まず事実関係を把握した上でと考えています。いずれにしても今後警察ともしっかりと協議しながら,適切に運用してまいりたいと思っていますので,その対応についても,事実関係の調査の上でスピード感を持って対応してまいりたいと思っています。

(以上)