• 議事録(PDF形式はこちらから)

日時

2018年10月18日(木)10:00~12:10

場所

消費者委員会会議室

出席者

【委員】
鹿野座長、池本座長代理、高委員長、樋口委員
【説明者】
株式会社伊藤園顧問 笹谷秀光氏
明治安田生命保険相互会社お客さま志向推進室室長 後藤俊二氏
明治安田生命保険相互会社お客さま志向推進室課長 宮原健治氏
三菱地所株式会社法務・コンプライアンス部ユニットリーダー 吉村友宏氏
三菱地所株式会社環境・CSR推進部ユニットリーダー 糸多弘子氏
三菱地所レジデンス株式会社法務・CSR推進部シニアリーダー 重藤進氏
【事務局】
二之宮事務局長、福島審議官、坂田参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 有識者ヒアリング
    株式会社伊藤園顧問 笹谷秀光 氏
  3. 事業者ヒアリング
  4. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

  • 議事次第(PDF形式:110KB)PDFを別ウィンドウで開きます
  • 【資料1】 ESG/SDGsと消費者志向経営との関係(笹谷秀光氏提出資料)(PDF形式:1050KB)PDFを別ウィンドウで開きます
  • 【資料2】 当社における消費者志向経営の取組みについて(明治安田生命保険相互会社提出資料)(PDF形式:859KB)PDFを別ウィンドウで開きます
  • 【資料3-1】 事業者のコンプライアンス体制整備(三菱地所グループ提出資料)(PDF形式:175KB)PDFを別ウィンドウで開きます
  • 【資料3-2】 消費者志向自主宣言(三菱地所グループ提出資料)(PDF形式:158KB)PDFを別ウィンドウで開きます
  • 【参考資料1】 お客さま志向の業務運営(明治安田生命保険相互会社提出資料)(PDF形式:207KB)PDFを別ウィンドウで開きます
  • 【参考資料2】 2017年度 消費者志向自主宣言・フォローアップ活動(明治安田生命保険相互会社提出資料)(PDF形式:166KB)PDFを別ウィンドウで開きます
  • 【参考資料3】 4つのKPIの状況等(明治安田生命保険相互会社提出資料)(PDF形式:118KB)PDFを別ウィンドウで開きます

≪1.開会≫

○坂田参事官 本日は、皆様、お忙しいところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

ただいまから「消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ」第11回会合を開催いたします。

本日は、所用により山本委員が御欠席との御連絡をいただいております。

議事に入ります前に、配付資料の確認をさせていただきます。

議事次第に配付資料を記載しております。

不足の資料等がございましたら、事務局へお申し付けいただきますよう、よろしくお願いいたします。

それでは、鹿野座長に以後の進行をお願いいたします。


≪2.有識者ヒアリング≫

○鹿野座長 おはようございます。

それでは、本日の議題に入らせていただきます。

本日は、消費者法分野におけるルール形成のあり方の重要な論点のうち、「コンプライアンス体制・消費者志向経営の普及に向けた方策」に関する検討を行いたいと思います。

このテーマに関しましては、当ワーキング・グループの中間整理におきましても、「コンプライアンス体制の構築や消費者志向経営の宣言が事業上のメリットにもなると実感できる合理的な仕組みやその『予測可能性』を高める方法」を重点的に検討すべきであると、論点として掲げていたところでございます。

そこで、まずは「ESG/SDGsと消費者志向経営との関係」について検討を行いたいと思います。

この点の検討に当たり、御意見を伺うために、参考人として株式会社伊藤園顧問の笹谷秀光様にお越しいただいております。

笹谷様は、日本経営倫理学会の理事やNPO法人サステナビリティ日本フォーラムの理事をお務めのほか、CSR\SDGコンサルタントとしても御活躍していらっしゃいます。本分野について多くの著作を執筆されるなど、精力的に活動されていらっしゃる方であります。

本日は、SDGsやESG投資と消費者志向経営との関係を中心にお話しいただきたいと思います。

ESGは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の3つの要素に配慮して行われるESG投資と言われるものですが、これに関しましては、年金積立金管理運用独立行政法人がESG投資を重視する方針を打ち出すなど、我が国におきましても、ESGの視点での取組が広まりつつあるように思われます。

こうしたESGやSDGsの視点が、事業者の消費者志向経営にどのような影響をもたらすのか、あるいは、それらの視点を活用することでどのように消費者志向経営を推進し得るのかというような観点で、本日笹谷様から貴重なお話を伺えるものと期待しているところでございます。

それでは、まずは15分程度でお話しいただきまして、その後、質疑のところで補足いただければと思います。よろしくお願いします。

○株式会社伊藤園顧問笹谷氏 皆様、おはようございます。

初めに、「消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ」ということで、このような貴重な場でお話しできることを大変光栄に思います。

鹿野座長、高委員長をはじめ、関係者の皆様に感謝申し上げたいと思います。

私は、ESG/SDGsといった新たな要素と消費者志向経営との関係についてお伝えしたいと思います。

最初に、今日はパワーポイントでの御説明ではないので、1枚写真を持ってきました。これは先日行った、白川郷のカヤぶき屋根をふき替える作業の写真です。世界文化遺産で、みんなでずっと守ってきた。5年に1回ぐらいふき替え作業が必要で、昔は農家がみんなで輪番でやっていたのですが、今はNPOや関係者の力も借りて、百数十残っているそうですが、この仕組みを結ぶと書いて「結」と言います。

このようないい仕組みが日本にはいろいろなところに残っているのではないか。この仕組み自体を、今後グローバル化と非常に変化の激しい中でどのように生かし、説明していくかということが一つのポイントであろうと思います。

資料に即して御説明しますと、最初に3ページに「三方よし」と出てきます。これは、農村版の結の仕組みが商人の倫理となりますと、今の滋賀県の辺りから発祥しました、近江商人の「三方よし」。「自分よし、相手よし、世間よし」と言っていた。

私は今、この「世間」というところを少し幅広にグローバルな世間と捉えれば、ESGとかSDGsへの要請をある種の世間だと理解すると生かせるのではないかと思うわけですが、ただ、一点補正が要ります。

三方よし研究所というところが彦根にありまして、見てまいりましたら、「三方よし」は右下にありますように「陰徳善事」という単語と常にともにある。これは読んで字のごとく、善(いいこと)と徳は隠す。これは日本独特の同質社会の中で、言わなくても分かる人には分かる、空気を読めといったような雰囲気があるわけです。このカルチャーがかなりの程度日本社会の中に浸透して、組織や企業も割と似たような感じで、発信が少し抑えられているのではないかと思うわけです。

私の今日の御提案は、これに発信を付けまして、「発信型三方よし」、投資家向けには「開示型三方よし」といったことが一つの提案になるのではないかと思います。

次のページの日本再興戦略が、21世紀に入ってからの一つの重要なポイントだったと思いますが、アベノミクスの第3の矢として放たれた中に、スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードを作る。また、これの裏付けとなる、伊藤邦雄先生が座長をされました伊藤レポート1.0がありまして、この2つで日本経済、特に株式市場に関しててこ入れができるのではないかという提言がまとまって、かつ、この2つのコードが発効しました。

このコード、特にコーポレートガバナンス・コードは事業会社に適用されますが、特色は「Comply or Explain」という、「守りましょう、守ってください、守らないのであればその理由を説明しましょう」というかなり新たな仕組みです。今日は法律の専門家が多いので間違っていたらあれですが、ある種「ソフトロー的な」イメージでスタートをしたということが非常に大きな特色であったわけです。4から5年たちまして、今、かなりコーポレートガバナンス・コードは定着を見て、内実もよくなってきていると思います。

そのときに話題になってきているのが、左側にありますトリプルボトムラインですが、これは、もともと20世紀後半ぐらいから言われていました。経済だけではなくて環境、社会だと。そこの経済主体のところにガバナンスをきちんとしないと世の中は良くないということで、ESGの時代に入ったということです。

次の5ページにいろいろな流れのポイントをまとめておきましたが、この中でも2015年が非常に重要な年だったと思うわけでありまして、その次のページにタイムラインとしてまとめてみますと、2015年はパリ協定、SDGsができた。そして、コーポレートガバナンス・コードの発効もあったということと、後ほど出てきますが、GPIFがPRIに署名したということもありまして、正にESG全般に関して重要な事項が全部ビルトインされた年だったという意味で、私は2015年をESG元年と呼びたいと思っています。

その後、昨年2017年の12月26日に、ジャパンSDGsアワードということで、SDGsについてのベストプラクティスが12団体・企業選ばれました。これをベンチマークにしながら、今年2018年はいよいよ「SDGs実装元年」にすべき年になっていると思っておりまして、ぎりぎり五輪・パラリンピックに間に合ったのではないかと思います。

なぜかと言うと、五輪・パラリンピックもSDGsを参照しながら調達や運営のルールが定まっていくということですし、その後の2025年の大阪への万国博覧会の誘致対応についても同じようにSDGsが必要で、その流れで2030年を目指すというこのタイムラインになっているのです。この辺について、委員の皆様の御見識から勉強させていただきたいと思います。

次の7ページのこの図が、約160兆円と言われている我々の年金を扱っている年金積立金管理運用独立行政法人、GPIFがホームページなどで常に開示している図です。これは、左側の投資面ではPRI、責任投資原則を投資家が守りますと。一方で、事業会社はこのSDGsを活用して共有価値の創造を見出してもらいたいということで、相互にリンクを張って、投資家的な角度からも、事業会社の角度からも価値の生まれる構造を作りましょうという提唱をされていて、この図1枚が相当にインパクトを持って、2016年、17年、18年と牽引している。そういう意味では、ある種投資家のサイドからの牽引要因が今回の大きな特色であろうと思っております。

これを受けて、GPIFは所要のESGに関連するインデックスの発表をしたり、また、今、GPIFは自分で株を買いませんので、それに関与している関係の証券系の機関などが一斉にSDGsも勉強している。そうなるとどうなるかというと、IR、インベスター・リレーションシップの局面で、社長とか経営層がいろいろSDGsとかESGについて問われる。そうしないと、長期的な保有の機関投資家の信頼を失いかねない。そういう意味で、非常に大きな牽引要因になってきたと思っています。

一方で、次のページにありますが、これを受けまして、経団連もSDGsを主軸に据えた「Society 5.0 for SDGs」という角度で企業行動憲章の改定もして、経済界全般で動いておられる。

関西に行きますと、OSAKA-KANSAI JAPAN EXPO2025の目指すものの1つ目がSDGsの実現であるとなっているわけでありまして、SDGsがいろいろな意味で主流化してきているということであります。言わばESGは投資家から見た感じなのですが、その実行としてSDGsを一つの参考資料にしましょうという流れで、裏腹でESGとSDGsの両方が進行している。

それで、この投資家が牽引した流れは、例えば各メーカーはいろいろ納品したりするのですが、その大きなプラットホームを形成している流通大手、車ですとか最終製品を作っている大きな製造業への部品供給、それから、世界とのつながりでいろいろ調達、製造しているサプライチェーン全体のリーダーシップを握るところ、これらに影響を与えていますので、それらと付き合う上で取引先との関係のSDGs、ESGも動いているということです。

それから、今、五輪に関連しては、言わば五輪という公共調達的なところでSDGsが踏襲され、先日、地方自治体のSDGs未来都市というのが29個選ばれましたので、29の地方自治体でもSDGsを推進する。いろいろなところのステークホルダーが、SDGs、ESGに向かって主流化の動きをしていると私は見ておりまして、今日はその中でも、最も重要な製品やサービスの提供を受ける消費者という角度から、そこのてこ入れをどうするのかという角度の議論だと思っております。

次にこのSDGsですが、11ページにはSDGsの基本が出ています。

今日御紹介したいのは12ページで、皆様御承知のとおりなのですが、SDGsの理解は、私は31年間農林水産省で勤務いたしまして、うち3年間外務省の出向もありました。また、環境省にも3年出向したという経過の中で見ておりますと、このSDGsを提唱した2015年の「2030アジェンダ、我々の世界を変革する」という国連で決まった文書は非常によくできており、SDGsはその中の主要要素として盛り込まれました。

5つの「P」で理解する、構造を理解するといいのではないかと思って、今日は御紹介したいのです。この真ん中の図は国際連合広報局の図でありますが、まずは、今、世界の持続可能性を考える際の基本要素の「People」、人間にとって何が大事か。逆に言えば、人間の存在が脅かされている要素は何なのか。2番目は「Prosperity」、繁栄は大丈夫なのだろうか。それから、地球環境はどうなのか。平和はどうか。パートナーシップは形成できているかということが課題でもあるわけです。この課題を対処するために17の目標に収れんして、実は2015年にまとまるまでに3年がかりで関係国で議論されました。

まず、「People」に関しては、貧困の撲滅、飢餓の撲滅、健康、そのことを理解する教育、ジェンダーの平等、水の6要素が最低限必要だろうということで、これはこのSDGsの前身であるMDGsのころから引き継がれている事項が多いわけです。

2番目が繁栄で、7番のエネルギーがあって、8番の働き方改革があって、働きがいのある職場づくりと経済成長。そして、9番の産業と経済基盤。不平等の防止、住み続けられるまちづくり。この辺には企業の役割が非常に重要となる要素も入っているわけです。

これらの活動が行われる「Planet」に関しては12番、資源は有限だということで、「つくる責任 つかう責任」がありまして、13の気候変動、14の海、15の陸と生物多様性です。

以上のことは平和があって達成されるということで16番に平和があり、これらの非常に難しい課題をみんなでやろうというので17番のパートナーシップができている。

このように、たまたま順番に、1~6までが「People」、7~11までが「Prosperity」、12~15が「Planet」、16が平和で、17がパートナーシップと、非常に分かりやすくできています。こういう構造を理解すると皆様も分かるのではないかということで、このことをできるだけ分かりやすく浸透を図るアプローチが、各ステークホルダーで毎日のように実行されていることは非常にいいことだと思っています。私もいろいろなところで呼ばれて説明しますが、このような説明も一つの説明の仕方として、構造をよく理解すると、なぜこれをやらなければいけないかが分かるのではないかと思います。

SDGsは、私は国際文書としても非常によくできていると思います。これを理解した前提で、企業がそういうことをどのように導入しているかというときに、最初に出てくるキーワードが「企業の社会的責任」です。

でも、この「責任」という日本語の概念がちょっと狭い。受けとめ型なので、むしろ「Response+ability」、反応する能力ということで「社会対応力」といった捉え方に広げていただいたほうがよろしかろうと思っております。かつ、後ほど申し上げますが、今は本業で責任を達成するというのが主流になりましたので、本業で社会対応力をつける。そうしますと、本業をやりながら、次のマイケル・E・ポーターとマーク・R・クラマーが提唱しました「Creating Shared Value」、これも非常に難しい概念かもしれませんが、あなたにもいいし私にもいいという、経済もいいし社会もいいという構造を作っていくということにすぐにつながる。

それで、この社会にもいいというときの社会の見方を提起しているのが、17個から成る世界の共通言語としてのSDGsではないかと。このように3点そろってきているのではないかと思います。

実際に、私も企業現場でこのとおりの流れを実行してきましたので、正に時代の流れを自分で感じながら、次にはどうする、次にはどうすると手を打ってきた実績と裏付けの中でお話しさせていただけると思います。

私は、今日はこの中のISO26000をもう一度見直していただいてはどうかと思います。

次の14ページにありますように、これは2010年にできた国際ガイダンスです。Guidance on social responsibilityというもので、社会的責任の手引であります。これは、ISOという国際標準化機構が作りましたものをそのまま各国が適用しまして、日本ではJISZ26000ということで日本工業規格になっております。私は政府で議論するときの一つのベースに使っていただいてはどうかと思うぐらい、よくできているなと思います。

今は、国際的に全部の関係者が合意をしてルールをまとめるのは非常に難しい時代になりましたが、2010年に10年がかりの議論を経てまとまったもので、これは政府を縛るものではありませんが、関係国際機関にも合意を取ってある。それから、いろいろな他のものとの整合性も取っていて、ソフトローではありますが世界的合意があるという非常に貴重な文書です。

この特色の第一点が、先ほど言いました本業で遂行しろということです。本業でやると、企業のイノベーション力を発揮できる。それから、本業をおろそかにして自然に寄付しましたということは許さないぞということです。3番目に、寄付型のいわゆるフィランソロピー型のCSRですと、もうけたときだけ応援するけれども、もうけなかったときは応援しないと、継続性が担保できない。このような理由から、本業でやりましょうということが主流になったわけです。

もう一点が、右に図がありますが、7つの中核主題ということでやるべきことリストを提起しています。真ん中で組織統治をきちんとやって、人権、労働慣行、環境、公正な事業慣行、消費者課題、コミュニティ課題をきちんとこなしましょう。かつ、相互の依存性を理解して、全体的なアプローチをしよう。これはすばらしくよくできていまして、このワーキング・グループの今回のテーマでは、消費者課題が主軸になると思います。

よく問われますが、グローバルコンパクトというものもあります。次のページにグローバルコンパクトとの関係図を入れましたが、グローバルコンパクトはこのうち人権、労働慣行、環境、公正な事業慣行のうちの汚職の防止を担保するものとして、国連のほうと協議を結んで対応する。これとも整合性を取れています。注目するのは、消費者課題とかコミュニティ課題がグローバルコンパクトに入っていないので、そこはISO26000が補完できるのではないかと思います。

さらに次のページに、ESG時代を迎えた場合に、ESGも全部ビルトインできている。真ん中の組織統治がGです。そして、右下に環境のEがあります。残りがSと理解すれば、非常に使い勝手のいいものになっている。

加えて、ISO26000はSGDsができたときにもきちんと対処できる。日本では基本的には大手企業が中心かもしれませんが、相当の企業でISO26000の当てはめは終わっております。いろいろなホームページに大体対比表みたいなものが全部できている。そのできている7つの中核主題の中身のところに、主に関係あるSDGsをマッピングしていきますとこのようになります。例えば、ジェンダーは労働慣行と人権の間ぐらいにありますし、8番は労働慣行そのものですし、6、7、13、14、15は環境のようなものですし、公正な事業慣行は16、消費者課題は恐らく12とか3が重要な要素になろうかと思いますが、コミュニティ系もあります。一番上の目標は全体に関係します。

そうしますとどうなるかというと、真ん中に2010年に企業としてやるべきことリストを7個洗い出してあり、SDGsは2030年に向けての目標としてダイナミズムを与えた。そのことで、やるべきことリストにダイナミズムが加わりまして、非常にいい企業の動き方になるのではないかということです。

もう一つは、企業は社会課題ばかりに対処できないので、社会課題と経済価値を同時実現するという非常に有力なこのCSVの概念を実行しないと、なかなか継続性がでない。ということで、マイケル・E・ポーターのCSVは非常に有力な概念だと思います。が、よく誤解が出やすいので、その下の19ページのCSRとCSVの関係イメージはこのようにピラミッドみたいになっていると思います。下のほうに守り的なCSR項目を固めて、ここからマテリアリティーということで経営上の重点課題を抽出して、少しとがって新規ビジネスを開拓するということになる上のほうがCSV。CSRの根っこをCSVで更に補強する。このような構造が一つの理解の仕方でございます。

その場合に、SDGsはどうなるのか。SDGsはいろいろな捉え方がありますが、企業にとってのSDGsは正にCSVのためにあると私は理解をしていまして、SDGコンパスというものが定められています。

21ページを御覧いただきますと、SDGコンパスでは17個の下に実は169のサブターゲット、キーワード集が並んでいますが、これはあなたの企業にとってチャンスかもしれませんよ、チャンスを探してください、他の企業よりも早く探しましょうというのがあります。一方で、これをちゃんと押さえておかないとリスクかもしれません、ちゃんとリスク管理にも使ってください。両面でしっかりやりますと、経済価値も実現して、社会課題にも対処できて、いわゆるCSVのバージョンアップになっていくということで、企業として使わない手はないなというか、企業にとって非常に重要な要素であると思います。

そのように使っている企業の事例の一端を見ますと、次のページにジャパンSDGsアワード、昨年12月26日に官邸で政府のSDGs推進本部が選定した12団体・企業であります。内閣総理大臣賞は北海道の下川町がバイオマス発電のすばらしい有機的な項目をやっておりまして、外務大臣賞に企業が2社、サラヤ、住友化学です。それから、特別賞の中に吉本興業と、私が顧問をしております伊藤園が入っております。官邸のホームページに受賞企業の取組があり、それを23ページに載せてありますので御参照ください。

一例として、消費者に近い角度で言えば、伊藤園の場合は割と消費者に近いので、24ページに伊藤園の受賞の内容を御紹介しております。

「お客さま第一主義」という理念の下で、茶畑から茶殻まで持続可能な生産と消費に対応しますということで、例えば茶産地育成事業のところ、茶殻リサイクルのところ、「お茶で日本を美しく。」というキャンペーンのところ、全てにSDGsの関連をマッピングするとこのようになりまして、大体17個全部が関係あって、ベースのところのバリューチェーンを支える基盤にもSDGsが関連します。

これが他の企業にも応用がきくという意味でいろいろな評価をいただいているわけですが、例えば、その代表的な事例である次のページの茶畑から茶殻の茶産地の育成事業については、新産地事業というタイプがあります。これはお茶の調達の一部を補完している伊藤園にとっての重要な事業ですが、昔は左のように耕作放棄地があった、これを農家、行政と組みまして、茶園の育成の段階からいろいろな角度で参画をさせていただいて、右の産地になります。伊藤園はここから安定調達。全量買い上げをしますので、農家も経営が安定する。技術の供与もしますので、技術的にもてこ入れができる。そして、世の中的には耕作放棄地がなくなる、雇用が生まれる。

こういった、正に伊藤園よし、農家よし、世間よしという三方よし構造が生まれておりまして、このことを英語にして発信しておりますと、世界で400万人が読んでいると言われるフォーチュン誌という雑誌で、2016年9月に特集がありました。「世界を変える企業50選」、それも事業を通じて変える50社。日本企業は2社で、そのうちの伊藤園が18位ということで、世界にも認められるような構造になったということでございます。

このように持続可能な生産と消費をしていることをうまく発信していることがいろいろな評価につながっているなと思います。

次に、今の、私が言う発信を付けた「発信型三方よし」をするということで、消費者志向経営がどういうふうにてこ入れができるのかという角度ですが、ISO26000に戻りますと、7つの中核主題のうちの消費者課題のところに赤丸を付けてありますが、右のそれのサブ項目が並んでおりまして、公正なマーケティングとか安全衛生、持続可能な消費とありますが、これは消費者委員会でも全て網羅されている重要事項であろうかと思います。

私はその次の28ページの、SDGsで言う12番が非常にキーになるなと思います。よく読みますと持続可能な生産消費形態を確保する、「つくる責任 つかう責任」。私は消費者の「つかう責任」という角度で、言わば持続可能に生産したものを積極的に選びますよ、同じものを選ぶならそういう企業のものを選びますよということが「つかう責任」でありまして、そちらの角度のてこ入れが大きく進むと、企業のいろいろな消費者志向経営の後押しにもなるし、選別にもなっていく。消費者から選ばれる会社になるというような概念につながると思います。

この12の中にサブ項目がありますが、その中でも、「12.8 2030年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする」。ライフスタイルまで変えていきましょうという項目も入っていまして、正に消費者委員会や、また関連の消費者庁などが進めている政策の行きつく先のヒントがここにあるわけでありまして、日本はむしろこれを先行していろいろやっているぐらいなので、ここで改めて確認をされたということだと思います。

そうしますと、これはライフスタイルまで変えましょうという非常に壮大なもので、私は大変いいことだなと思います。正に消費者全員の参画の下でやると。

それを頭の整理をして、次の29ページにこの「つかう責任」というResponsible Consumptionという概念をうまく生かして真ん中に据えてしまうと、Responsible Consumptionの消費者がそういう消費財を選ぶようになれば、いろいろな角度で好影響が出る。

例えば、農業現場に関しては、持続可能な農業をやっている企業の応援をすることにつながるのでしょうし、健康に関しても本当の意味できちんとした健康の製品を作っているもの、いろいろな制度がありますが制度を守って対応しているものの応援になりますし、そのことをみんなで学ぼうとなります。

また、使う側から言えば、水の使い方、エネルギーの使い方に関してはエネルギー教育にもなりますし、例えば住み続けられるまちづくりのところはいろいろなものを使うこと、例えばリサイクルとかの意識をきちんとすることによってまちづくりにも貢献ができるわけでありまして、13、14、15の環境系はもちろんのことです。16番の公正性がありますので、これは平和だけではなくて公正性も含みますから、やはり公正的にやっていない企業に関してはきちんと指摘をするということもあるわけであります。このような捉え方で、私はSDGsはとにかくいろいろな方がうまく使って、一刻も早く浸透させるという意味では、例えばこのような使い方があるのではないかと思います。

実は、これはユネスコ国内委員会が真ん中に4番を入れて、全てが教育でうまくいくというようなことを提唱されておりますが、今回のテーマでは軸は12番かなと思っております。もちろん消費者庁やその関係機関はこれ以外にもいろいろな項目をSDGsで関連付けておりますが、主なSDGsの整理をトライするとこんなイメージです。

次に、企業にこれを落とし込みますと、企業は今、このESGとSDGsでこんな整理をしています。左側にESGの投資家のチェック項目を並べて課題整理をしております。例えば消費者課題のところは、7つの中核主題のやるべきことリストを並べて、ここにあるような6項目が、投資家が見ているチェック項目であります。このチェック項目を消費者委員会や消費者庁で指示される項目も加味していって、これをちゃんとやると、右側に黒丸が付いているところは主に関係するSDGsの項目に寄与しますよ、白丸は間接的なものとして寄与しますよと見ていくと、いろいろな角度でSDGsへの貢献効果があって、かつ左側でESGの投資家の目線にも対処できる。

実は、この真ん中のいろいろなやるべきことリストには数値目標も入れてありまして、数値目標を立てて進度管理をしてPDCAを回していけば、ESGにもよくて、SDGsへの貢献も分かるというような両方に使えるマトリックスになっておりますので、是非御参照いただきたい。

このようなことを発信しますと、次のページにあります消費者意識調査で、経営方針や理念、社会貢献活動を意識するというのが統計で20%弱あるのです。たまに意識するというのが40%、このたまにというのがどのぐらい「たまに」なのかをもう少し深掘りして知れればいいなということと、これの世代別が分かるとありがたいなと思ったりしております。恐らくミレニアル世代、ポストミレニアル世代はもっと高いのではないかと思っております。

その次の32ページに消費者庁の今回のこのまとめに向けての中間報告がありますが、大変いい内容が盛り込まれつつありますので期待しておりまして、特に消費者志向経営のロゴがもっと発信性の強いものになっていくと良いのではないでしょうか。そのため、今度表彰制度などもあるようですから、いろいろな表彰制度なども通じてこのロゴが広がっていけば非常にありがたい。企業としてはこういうマークなどは客観性が高いので非常にありがたいと思います。

まとめ的なものに入りますと、これから消費者志向経営をするためには、サステナビリティ・マネジメントといった非財務情報の整理学がどうしても必要でありまして、まずはトップの意識、それから責任体制を構築して、今は難しい課題が多いので、取引先や関係機関との連携、そして、サステナブルなブランドにする。これはコーポレート・ブランドの確立と、関連してプロダクト・ブランドの確立の両面ですが、何よりも社員の意識でモチベーション向上を図る。これにSDGsがうまく使えるのではないかと思っておりまして、それを消費者に発信することによって消費者からの信頼が得られていく。

このような取組は34ページのように各界から始まっておりまして、今、産官学だけではなくて「金労言」、金融界、労働界、メディア界も重要だということで、いろいろなところにイニシアチブがあります。

例えば、先日非常に良かったと思うのは、千葉商科大学では再生エネルギー100%大学を目指すということで、学生とともに学んで、全部ソーラー発電などで再生エネルギーにしている。それを学生とともにやりますから次世代育成にもつながるので、非常に消費者のマインドが変わるいい教育をされている大学もあります。ここにありますようないろいろなものでPublic Private Action for Partnership、PPAPは政府が推進しているキーワードですが、官民連携による取組。その根っこに消費者がいて、消費者がそのことをきちんとウオッチして、情報が得られたらそれを評価したり、反応したりするようにすれば、消費者の選ぶ力、参画が企業の後押しにもなり、また、企業はそこを目指して発信をする。

35ページにまとめがありますが、協働のプラットホームを是非作っていきたい。又は参加したい。そして、三方よし構造を作って共有価値を生む。このことを学んで発信する。以上によって企業価値も上がり、消費者からの信頼も得て、SDGs先進国になっていくのではないか。

以上の御説明をさせていただきますと、最初にお示ししたこの白川郷を消費者とか関係者に示すときに、白川郷の結はいいですよねとありますが、これを例えば17番ですよと示すだけで、ああそうかとすぐに伝わる。

このSDGsのピクトグラムの威力と発信性の強さをうまく生かせば、消費者にも早くいろいろな角度で伝わるということです。その場合、両面ですよね。リスクを冒していませんか、法令をきちんと守っていますかという規制面でのコンプライアンスをしっかりチェックする。一方で、やはり消費者にいいものをイノベーティブに作っていきましょう、場合によっては消費者と一緒に作りましょうと。このことのパートナーシップが求められますので、このようなSDGs活用の分かりやすい示し方をすることで消費者の反応も得られるのではないかと思っております。

どうもありがとうございました。

○鹿野座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明を踏まえまして、御質問、御意見等のある方はお願いします。

高委員長、お願いします。

○高委員長 どうも御説明ありがとうございました。

トリプルボトムラインからISOからSDGs、ESGと、いろいろなガイドラインとか考え方が出てくる中で、どうやって全体を整理するのかということを非常にうまくまとめていただきまして、ありがとうございました。頭の中が整理できました。

それで、いろいろな論点があると思うのですけれども、我々は消費者委員会のメンバーでございますので、先ほど29ページで「つくる責任 つかう責任」は非常に分かりやすい理解だと。あるいはこういうアプローチが基本にあっていいのかなと思うのですけれども、例えば企業側が作る責任をしっかり果たしている。果たしている会社の商品とかサービスを積極的に購入しようということは使う責任、買う責任ということになるのでしょうけれども、ちょっと意見を聞きたいのですが、一つ考えなければいけないのは、発信される情報、要するに、いいものを選んでそれを応援しようと思ったときに、表示のところで偽りというものが起こる可能性も十分にあるわけですよね。

そういう意味では、こういうSDGsの社会を実現していこうと思ったときには、そこのルールはもうちょっと厳格なもの、あるいはもっと効果的なものに作り替えていくべきではないかということもSDGs社会を目指す時には必要になってくるのかということをお聞きしたいのが一点です。

もう一点は、例えば消費者志向経営を宣言されている会社は相当コミットされているわけですよね。そういういい会社であっても、あるとき、現場のミスでもって表示を誤ったりすることがあるわけです。その場合、例えば課徴金をかけるという仕組みがありますけれども、そういったミスによるものと、最初から誤解を招くことを前提にして表示を行っている事業者、例えば消費者志向経営宣言などはやっていない会社、この両社を一律のスタンスでもって課徴金を課すことは、私は余り合理的ではないと思っているのですが、柔軟な仕組みを作るということに関してはどのような御意見をお持ちなのかをお聞きしたい。

以上、2点です。

○鹿野座長 それでは、お願いできますか。

○株式会社伊藤園顧問笹谷氏 一点目ですが、まず発信するときの発信の信頼度が最も重要な側面になると思います。発信についてもISO26000なりそういうルールでいろいろ項目が示されています。正確であること、入手しやすいこと、都合のいいことだけを発表しては駄目ですとか、情報の継続性を出せとか、幾つかの発信に関するルールもあります。

これを制度化したものがいろいろな法令としてあるわけですが、法令の中には2種類あるかなと思うのです。それを必ず守らないと安全性が担保できないという非常に厳しい部分のものと、そこまではいかないけれども、少し誘導措置をしていい表示のほうに持っていこうという誘導的なものと両面あっていいのではないかと思います。これは事柄の深刻度と保護法益の程度によって、厳格にやるべき、安全とかその辺に関わることはこれからもきちんと厳格にやっていく。

それから、次の安心というようなイメージで何か付加価値を提供することは、情報の正確さだけでも担保すればそれなりに選べる判断になる。ただし、いろいろな情報がばら立ちで、消費者として比較検証ができないものですと駄目ですから、そこは行政としてある程度比較検証ができるような、言わばガイダンス的なものからスタートするというようなこともあっていいと思いますので、厳しい規制的な手法と誘導的な手法、物事の内容によって両方使い分けていっていただければありがたい。

そうしないと、事業者としては難しいのです。法令を守るという厳格的な部分を守らないのはあり得ないのですが、誘導性のところは、競争ですからいろいろな人がいろいろなことを言うわけです。それではどこがいいのかなと思うような、自信がないような状態になりますよね。そこはある程度公的なガイダンスめいたものがあれば、それに即して動いていき得るので、そういう方法はありかなと思いますし、両方必要ではないかと思います。あらゆることを規制的にやるのも難しい時代になりましたので、規制には規制の理由が必要だと思います。

2つ目の、宣言をしている会社の価値を認めるということは、宣言をしていたのにミスが起こったので、それはやむを得ないのではないですかというのはなかなか納得が得られにくいのではないかと思います。やはりミスの中身とか法令違反があったこと自体はそれはそれできちんと厳格に平等に対処すべきではないかというのが私の感じです。宣言をしていたから少し緩くしましょうとか、宣言をしなかったから厳しくしましょうということではなくて、その事柄がまずいのでルールがあるわけでしょうから、ルールは統一的にというか、憲法上の平等の精神で動かざるを得ないのかなと思います。

消費者志向経営を宣言していることの意味は何か。これはISO26000にも書いていますが、何かトラブったときに、「あらどうしたのかしら」と思っていただけるような、日ごろの信頼度がリカバリーに好影響が出るというような違いではないかと。そういうこともしていないような企業だったら、「やっぱりね」というか、全然信頼度がない。その辺の日ごろの蓄積の違いとして理解したほうがよろしいかなと感じがする。課徴金に差を付けるとか、私は専門家ではないので分からないのですが、イメージ的には消費者志向経営の宣言の意味はそういうところではないかなと。

あとは、防止機能が非常に高いということはあります。いろいろな意味で、社員にマインドを浸透させますから、その防止機能が高い。何か起こったときには、その起こったことの軽重を消費者志向経営の宣言との関連で対応するのはなかなか難しいかなという気が直感的にはします。

○鹿野座長 他にいかがでしょうか。

池本座長代理、お願いします。

○池本座長代理 池本でございます。

非常に示唆に富む御説明をありがとうございました。

御説明の中で、SDGsあるいはESGのこれまでの様々な取組をどう企業全体、あるいは社会全体で普及させていくかという中で、最後の辺りでは消費者の選択が重要である、ただ、消費者の選択となると消費者向けの様々な教育の場を通じて合理的な選択ができるようにしなければいけない。これはなかなか息の長い課題になると思います。

前半の辺りでは政府による表彰制度も紹介されましたし、注目すべきは投資家が投資判断の際にこういった取組をしているかどうかを考慮する。それが様々な企業にとっては、きちんと融資を受けるためにも取組が必要だというインセンティブになるという注目すべき動きもあるとお聞きしました。

さらにこういった消費者志向の経営を促進していくために、どういう誘導策なのか。だからといってこういうことをやれということを義務付けるのもなかなか自己矛盾に陥ってしまうのかもしれませんし、さらに様々な企業に横に広げていくための方策について、むしろそれは我々で考えろということになるのかもしれないのですが、何かこれまでの取組を通じてヒントになるものがあれば御助言いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○株式会社伊藤園顧問笹谷氏 大変貴重な御質問だと思うのですが、私は消費者の中でも感度の高い方とそうではない方がいらっしゃると思うのですが、日本は非常に感度が高い消費者が多いはずなのです。物の選択に関しては、消費財の角度から言えば厳しい消費者がいっぱいいらっしゃる。非常にいろいろなことを考える消費者も多い。

あとは、情報の出し方の問題ではないかと。情報がないので知らないところでいくら選べと言われても伝わらない。ですから、事業者側からの伝え方の技術が非常に重要な時期に来ていて、欧米と比較しますと、まだまだ情報の伝達の仕方について十分な状況にはなっていないと思います。そこで、私が申し上げている「発信型三方よし」に切りかえないと、三方よしで非常にいいことをしているのですが、発信が弱いので伝わっていないという面が強いと思いますので、発信力の強化を事業者側ではしましょうと。

それから、その受け手である消費者につながるように、どのような情報が価値ある情報かという、情報を選ぶ選び方に関して、教育というか消費者の情報収集力の補強のために消費者委員会とか消費者庁という公的機関が、今の時代はこういう分野ではこの要素が重要だという、事の軽重に関して判断の基準を的確にお伝えしていくと。それに即して事業者も情報提供をしていくようになりますので、それの最たるものが表示のようなものなのですが、表示以外にもいっぱい世の中について消費者が知っておくべき基本情報があると思うのです。それらに対応してはいかがかなと思います。

そういう意味では、まず消費者志向経営という仕組み、それから、ロゴマークの認知度をもっと高める活動が今後進むのではないかと思うので、あのマークの意味をよく伝えていただいて、マークを持っていること自体に対する誇りを会社の中で見出して、かつ取引先とか消費者がそれを選ぶときの指標にできるような発信をしていただく。

そのためには表彰制度とかというものがありますと、表彰しますと発信性が非常に高まります。また、シンポジウムとかいろいろやりまして、いろいろ勉強したり学びの場にもなります。あと、メディアにも出ます。だから、公的機関の表彰制度というのは非常に波及効果の高いものですので、効果的な表彰をすることによって水平展開につながりやすいものになりますし、公的機関の役割ではないかと思います。そのために、Public Private Action for Partnership、正にみんなでやる。

民間企業自体が何か発信しても、必ずしも客観性がない場合がありますが、公的機関が表彰したり、表彰に伴うシンポジウムをしたり、表彰していきますと何年間かたまって優良事例集になっていきますが、その優良事例集も水平展開に役立つ。

いいことを伝えるのは、まず時間的に伝える。継続的に1回目、2回目、3回目、同級生はこれがありますと。次に、場所的につなげる。東京で授賞式がありました、それを是非いろいろなところで分科会的に全国展開をして、場所的にも広げて伝えていく。3番目は、情報の広がりが非常に大事で、情報的広がりはメディアとの連携や政府の公的なホームページなどで発信する。

私は10年前に役所を辞めましたが、そのころに比べて最近の政府のホームページは非常に進化していますし、FacebookとかSNSをお持ちの役所もありますので、その辺の情報をうまく活用することで拡散効果が高まるのではないかと。私はそういう意味で、誘導的な公的な情報発信は非常に大事なものになってきていると思います。

最近ではSDGsアクションプラットホームというものが政府全体でできておりまして、そこに優良事例がどんと出て、関係企業とリンクを張ったりしています。そのリンクと消費者庁の消費者志向経営とのリンクもあったりしますので、そういういいものをやっているところの情報を取っていこうとすると、そこからのリンクでいろいろなところのいいものにつながっていく構造ができていますので、うまく情報拡散のためのスキームをお作りいただければ大変助かると思います。

○鹿野座長 樋口委員、お願いします。

○樋口委員 貴重なお話をありがとうございます。

ESG、SDGs、ISO26000全体を整理していただきましたので、非常に理解が深まったと思います。

大きく言えば、1つだけ御質問したいことがあるのですが、伊藤園は特にそうなのですが、こういった取組に関してはリーダー的な企業、あるいはリーダー的な組織があって頑張っていただいているということを私もいろいろお聞きする機会もあります。

企業が自主的な取組を工夫して、それぞれの立場で取り組んでいこうという世界的な大きな流れには共感いたします。それは非常に基本的に大事なことだと思うのですが、ちょっと気になったのは、例えば中小企業にどういうふうにこういったことが浸透していくだろうかとか、あるいは企業の中でも経営のトップの方は理解していても、最近の企業不祥事でもそうですが、現場で取り組んでおられる方が、従来の慣行といったことの中で必ずしもこういう発想を身につけることが難しいとか、企業内、あるいは企業間でも相当大きな問題があるような気がするのです。そこについて何かアドバイスをいただけることがあれば、是非お願いしたいと思います。

○株式会社伊藤園顧問笹谷氏 おっしゃるとおり、全部に広げていくというのはなかなか難しい。理由は私の見るところ、ある程度感性が大事な時代になってきていると思って、何かをやることが「いいね」と思うかどうか。SDGsなどは義務でも何でもないわけで、やれる方がやれるところからみんなでやろうという言わばソフトロー的な動きになってきているので、効果的にうまく使ってくださいと。ISO26000ぐらいから始まったのですが、ガイダンスですから、うまく使って自分の企業の経営に役立ててくださいという流れです。

SDGsの企業の活用も同じですよね。SDGsの中で何に関係があるか、チャンスもあるしリスクもあるから、皆さんで考えてお使いくださいと。使わなければ駄目だとは言っていないわけでありまして、使うか使わないかは、経営判断の際に感性というか、そういうことを大事だと思うか思わないかの点があります。

私は、日本はそういうことを大事だと思っている企業がいっぱいあると思うのです。三方よしみたいなものがあって、それでみんなが何となくイメージが湧くように、どの会社も相当程度そういうマインドはある。あとはそのマインドに、これが横文字だということもあるかもしれませんが、新たな世界的な要請を取り込んで、自分もの化するというところに難易度を感じる方がいらっしゃる。

ですから、そこは行政も含めて、分かりやすい導入の仕方についてのマニュアルを作ったり、優良事例を集めてこの企業はこうやっていますよという事例を集めたり、優良の方々を集めた公的なシンポジウムのようなことで発信するなどの地道な役割が非常に重要だなと思っております。

SDGsも特にそうですが、その考えは日本には昔からあったよねと。ですから、白川郷のような「結」がある国に、「三方よし」もあって、もともとあるものを世界にも通用する形で発信しませんかというイメージだと私は思うのです。これらが全然ないところにSDGsというものがあって、是非理解しろというのではなく、むしろこの発信に向けての手順ではないかと思います。

その場合、草の根的な活動の際に、割と経営トップの方は早いのです。毎日経営がどうあるべきか考えて、いろいろなことを悩んでおられて、企業価値を上げるにはどうするかということを考えておられます。それから、社員のモチベーションを上げて活性化したいということを常に考えておられる。そのことによって、いい方が辞めない、いい人に来ていただきたいと経営を考えているわけで、そのような経営層は理解が早い。

それから、若者は理解が早いです。ミレニアル世代とかポストミレニアルは、SDGsなどは当たり前ですよね、今さら何でしょうかというようなぐらいの価値観があります。

すると、真ん中のところの、日ごろの足元のノルマを背負って経営しなければいけないという非常に経営の中軸を担っている方々に、実務もやりながらこういうこともやるということの理解を浸透させることが非常に課題になってくるなと思いますので、それは教育的なもの、訓練的なものを継続的にやることと、分かりやすく説明することが主軸になるのではないかと思います。

そういう意味では、場合によっては中小企業のほうが早いかもしれません。経営トップがさあやるぞと言うと早いかもしれないということであります。

最近、非常にいいマニュアルで、環境省が作りましたSDGsのガイドラインを中小企業向けにも作ったりしているものがあります。そういうものも大変期待が持てるなと思いますので、是非消費者委員会のこういう大変いい議論をしている内容をうまく整理されて発信をすることは、今、非常に受け皿になっていく機関も多いので、消費者の団体でもありますし、大学の勉強会もありますし、学会などもありますし、いろいろなところでそれを受けて敷衍をしていく仕組みがあります。

私は最近非常に光明を見ているのは、日本社会の良さが案外出ていて、日本は業界団体がありますが、業界団体から情報がどんどんおりていっています。中小企業にも中小企業の集まりの団体が地元にありますので、そこに良質なキャラバンを張って、皆様がいろいろなところで発信したり、消費者庁がそのことの大事さを発信をすることで、浸透チャネルが日本にはかなりありますので、これを活かしていけるのではないかと思います。

○樋口委員 ありがとうございました。

○鹿野座長 それでは、お時間がまいりましたので、笹谷様からのヒアリングはこの辺で終わりにさせていただきたいと思います。

笹谷様には、「ESG/SDGsと消費者志向経営との関係」について、非常に分かりやすく御説明をいただき、私たちもとても勉強させていただきました。

また、最初に言われた「発信型三方よし」という考え方の奥深さについても、改めて考えさせられましたし、何より、このような広い意味での消費者志向経営が、企業に対する制約ということではなく、むしろ企業にとって企業価値を高めることにつながっていく、チャンスをつかむことにつながっていくのだということを、整理して理解することができました。そして、それをまずは企業にちゃんと伝えること、自覚を持っていただくことが大切であると同時に、それは裏返せば、消費者自身が自覚をもってそのような消費をすることも重要であること。消費者には、使う責任があって、その消費者の自覚的な行動によって、企業のこのような消費者志向経営が促されることになるのだということについてもご指摘いただきました。私たちとしても、今後、いろいろな角度から更に検討しなければいけないと感じた次第です。

笹谷様におかれましては、本日はお忙しい中、御報告をいただきまして、どうもありがとうございました。

○株式会社伊藤園顧問笹谷氏 どうもありがとうございました。

○鹿野座長 それでは、席の交代がありますので、しばらくお待ちください。

(笹谷秀光氏 退席)

(明治安田生命保険相互会社 着席)


≪3.事業者ヒアリング≫

○鹿野座長 続きまして、本日のテーマに関し、事業者からのヒアリングを続行したいと思います。

まず、「消費者志向経営の普及に向けた方策」の検討に関連しまして、明治安田生命保険相互会社の皆様からお話しいただきます。

本日は参考人として、お客さま志向推進室室長でいらっしゃいます後藤俊二様、お客さま志向推進室課長の宮原健治様にお越しいただいております。

明治安田生命保険相互会社におかれましては、お客さま懇談会や消費者団体等との意見交換会を定期的に開催されるなど、「お客さまの声」を経営に生かす取組を推進してこられたと伺っております。

このような取組に関しましては、2006年度から発行を続けていらっしゃる「お客さまの声」白書においても、業務改善の取組状況を掲載・公表していらっしゃるとお聞きしております。

また、消費者志向の取組状況等を確認するために、4つのKPIを用いた取組を行っておられ、これらに対する評価結果につきましては「お客さまの声」白書に掲載するなど、積極的な情報開示を行っていらっしゃるということであります。

拝見したところ、KPIも実質的な形で作られており、これは企業にとってだけはなく、行政にとっても非常に参考になるのではないかと感じたところですけれども、そのKPIについてもお話を伺えるものと思います。

このような様々な取組は、消費者志向経営の普及に向けた方策を検討するに当たり、重要な示唆になるものと考えているところでございます。

短いですけれども、まずは15分程度でお話しいただきますようにお願いします。

○明治安田生命保険相互会社後藤室長 明治安田生命の後藤と申します。

本日は、このような機会を賜り、本当にありがとうございます。

御説明させていただきます本資料と、参考資料として最後のほうに参考資料1、2、3と3枚つけておりますので、こちらも併せて御覧いただければと思います。

それでは、当社における消費者志向経営の取組について御説明いたします。

1ページは、当社の概要となります。

当社は創業が1881年、明治14年となります。当社の前身であります旧明治生命と旧安田生命はともに明治初期から激変する時代に対応しつつ、お客さまの安心を守ってきた、日本で最も歴史と伝統のある生命保険会社となります。

その2社が2004年に合併して誕生した明治安田生命は、21世紀生まれの若々しい生命保険会社でもあります。

2ページは、当社の企業理念でございます。当社は昨年度、企業理念を刷新しております。企業理念、「明治安田フィロソフィー」は上にあります「経営理念」、真ん中にあります「企業ビジョン」、そして、「明治安田バリュー」で構成されています。

経営理念「確かな安心を、いつまでも」と、企業ビジョン「信頼を得て選ばれ続ける、人に一番やさしい生命保険会社」の実現に向け、全役職員が大切にすべき価値観が「明治安田バリュー」であり、その一つとしてお客さま志向を定めています。

3ページは、当社の消費者志向自主宣言に当たる、「お客さま志向の業務運営方針-お客さま志向自主宣言-」となります。名称が長いので、以下、当社方針とさせていただきます。

当社方針は、金融庁が公表しました「顧客本位の業務運営に関する原則」にも対応しており、記載の8つの方針で構成されています。当社方針の全文はお手元の参考資料1にございます。8つの方針にはそれぞれ当社の代表的な取組内容を記載しておりますので、後ほど御覧いただければと思います。

8つの方針がございまして、各方針の下に代表的な取組内容として、当社はこのようなことをしておりますということを記載しておりますのが、この「お客さま志向の業務運営方針」になります。

4ページは、本日の御報告内容と消費者庁の「消費者志向経営の取組促進に関する検討会」報告書で示された、消費者志向経営の取組の柱との対応関係となります。

当社方針は、「消費者志向経営の取組の柱と取組内容の例」を踏まえつつ、当社独自の取組を追加した内容となっております。対応関係の詳細はお手元の参考資料2にございます。

なお、参考資料2は、本日御参考として机上配付させていただきました「お客さまの声」白書2018の資料編から抜粋したものとなります。本日はお時間も限られていることもありますので、記載の3つの取組の柱と取組内容の柱に対応する、当社方針の2と8の一部について御説明させていただきます。

5ページからは、消費者からの意見等を受け取り、業務改善に反映させる取組について御説明いたします。

1つ目が、「お客さま懇談会」と「お客さま(団体)意見交換会」です。当社の「お客さま懇談会」は、業界に先駆け、1973年から開催しております。御契約者から寄せられた御意見等は、当社の最高意思決定機関である総代会等で報告するとともに、改善を要する御意見等については、担当部が対応を検討し、社内の会議体「お客さまの声」検証委員会で対応状況をフォローしております。

また、法人営業のお客さまである企業・団体窓口の御担当者を対象とし、御意見等をいただくとともに、当社の改善取組について理解を深めていただく機会が「お客さま(団体)意見交換会」となります。

6ページは、昨年度のお客さま懇談会の開催結果となります。

全国の支社等100会場で開催、御出席者数は2,261人で、全国の支社等の近くにある消費生活センターの方々にもオブザーバーとして御出席いただいております。

御出席者の構成、お寄せいただいた御意見、御要望、御質問等の内訳は記載のとおりでございます。

7ページは、消費者からの意見等を受け取り、業務改善に反映させる取組の2つ目、地域の消費生活センター等の定期訪問となります。

当社は年2回以上、全国の支社に配置しているお客さま対応の責任者が、地域の消費生活センター等を定期的に訪問しております。2017年度の訪問先は、延べ約400カ所となります。

この訪問は、当社のお客さま対応窓口を連絡することにより、苦情等が発生した際のスムーズな連携を行うことや、当社に対する御意見等をお聞きするとともに、各地域での消費者問題の傾向等を教えていただくことなどの双方向の情報交換を目的とした重要な活動と位置付けております。

訪問時の持参物は、消費生活センター等においても相談業務に活用できると思われる、社会保障制度や生命保険と税金の関わり合いを分かりやすく説明した「社会保障制度ご説明ブック」や「生命保険と税金ご説明ブック」、そして、詳細は後ほど御説明いたしますけれども、「お客さまの声」白書などとなります。

8ページは、消費者からの意見等を受け取り、業務改善に反映させる取組の3つ目、「消費者専門アドバイス制度」となります。

当制度は、消費生活センター等で相談業務に携わる有資格者や、消費者関連団体の役職者、他業態のお客さま対応部門の経験者など、約20名で構成する「消費者専門委員」から、当社の様々なお客さまサービス向上の取組について、消費者の視点に立った御意見・アドバイスをいただき、業務改善に活用するというものです。

当制度は、会議とアンケートの2方式で行っております。具体的なテーマについては、資料をおめくりいただければと思います。

9ページは、昨年度の消費者専門アドバイス制度で取り扱った主なテーマとなります。

御覧のとおり、お客さま向けのパンフレット、冊子等に加えて、お客さまが直接入力するシステムの画面なども取り扱っており、これらに対して忌憚のない御意見等をいただいております。

10ページからは、消費者志向の取組状況等の確認とその情報開示について御説明いたします。

当社では4つのKPI、すなわち企業目標の達成度を評価するための重要業績評価指標を当社方針に設定しています。具体的には、当社の取組がお客さま、社会、従業員の各ステークホルダーからどのような評価をされているのかを確認する指標として、「お客さま満足度」「企業好感度」「従業員意識調査」を設定し、これらの評価が結果として反映する「お客さま数」の4つをKPIに設定しています。詳細は参考資料3を御覧いただければと思います。

2017年度のKPIは、いずれも対前年で向上しており、順調に推移しております。

なお、4つのKPIについては、これらを達成すること自体が目的化しないよう、目標値を設定せずに経年の推移等を確認することとしております。

11ページは当社の「お客さまの声」白書についてです。

「お客さまの声」白書は、2005年度の2度にわたる行政処分以降、当社に寄せられた「お客さまの声」とその「お客さまの声」を反映した業務改善の取組状況の公表を主な目的として、2006年度から毎年発行している冊子となります。

今年で13回目の発行となる2018年度版から、当社の消費者志向自主宣言に基づく取組状況を報告する内容としており、冊子は全国の支社・営業所等の店頭に来店された方が閲覧できるよう備え置きするとともに、当社のホームページにも掲載しております。

また、先ほどの御説明のとおり、消費生活センター等の御訪問の際にも、当白書で当社の取組を御説明の上、御意見を伺うなど、双方向の情報交換につながるよう努めております。

12ページですが、最後に消費者志向経営の顕彰制度について、当社において消費者志向経営の推進を担当しております当室の考えを述べさせていただきます。

当社は、公益社団法人消費者関連専門会議、ACAP様が2015年に創設した表彰制度において、「ご高齢のお客さまへの対応」を御評価いただき、第1回ACAP消費者志向活動章を受章することができました。

事業者にとって顕彰制度における受章は、一般的に、当該事業者のお客さまだけではなく、一般の消費者の方、社会からの信頼獲得につながるものと考えておりますが、これ以外にも社内的にもメリットがあると考えております。それが記載の2つとなります。

1つ目ですが、消費者志向経営は経営トップと従業員が一体で取り組むものであり、受章は消費者志向の取組に更に励むという好循環の原動力になり得ると考えられることです。

2つ目です。受章できなかったとしても、応募すること自体に意義があり、他事業者の消費者志向経営に関するお取組を自社の取組の参考とすることも可能であると考えられることです。

以上が、当社からの御説明となります。最後まで御清聴くださり、誠にありがとうございました。

○鹿野座長 御説明ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明を踏まえ、御質問、御意見等のある方は御発言をお願いします。

高委員長、お願いします。

○高委員長 ありがとうございました。

御社の取組はトップがコミットしながら推進されているので、かなり浸透していると理解しております。

もし答えられればということで2つほどお聞きしたいのですけれども、1番目は、御社は相互会社でいらっしゃるので、お客さまと株式会社で言うところの投資家が別々になっていない。両者が一致していることが取組を後押ししていると感じられるのか、もちろん株式会社ではないのでそれは分からないでしょうけれども、投資家と消費者の利害は意外と対立する部分があると思うのですが、それについて感想めいたものがあればお聞きしたいというのが一点。

もう一点が、従業員の意識調査をされているということなのですけれども、お客さまとのきずなというものが、現場の営業職員の方は実感を持てると思うのですが、本社にいらっしゃる方々に対しては、どのような取組でもってそういう意識を浸透させようとしているのかを聞かせていただけませんでしょうか。

○明治安田生命保険相互会社後藤室長 御質問ありがとうございます。

まず1つ目の御質問は、個人的な意見となりますが、委員長がおっしゃるように、当社は相互会社でございますので株主がおらず、株主を意識してということにはなりませんので、相互会社としてのお客さま志向経営、消費者志向経営を進める上でのメリットはあると思います。余り回答になっていないかもしれませんが、個人的な見解としては、相互会社という形態であることが、消費者志向経営を進めるにあたっては当社としてはプラスではないかと考えているということです。

2つ目の御質問、従業員意識調査や消費者志向の意識についてですが、先ほど申しましたように、当社では、経営トップだけではなく、従業員と一体となって活動することが大事であるということで、枠組みは会社が提供するけれども、それに応じて従業員が一体となって活動するという取組がございます。

例を申し上げますと、名称は「お客さま志向プログラム」といい、会社で幾つかの取組メニューを用意しております。具体的には本社部でも「お客さま志向の取組計画」というものや、自分の所属として自主宣言を年度始めに策定した以降、5月の消費者月間に合わせて、当社では今年度から「お客さま志向月間」というものを運営しております。社長から全従業員向けにメッセージを出し、その内容を確認するとともに、自分たちで策定した計画の内容を再確認する。それから、自分たちで立てた自主宣言については、無理にということではありませんが、唱和を推奨しております。

また、取組メニューの中には従業員向けの研修等もあり、本日、机上配付させていただきました「お客さまの声」白書を教材として、当社はこういう取組をしていますといったことを勉強するなど、本社の人間もお客さま志向というものを意識させるための枠組みを会社が提供して、それをみんなで理解して、その上で自分たちに何ができるだろうかということで、そのメニューの中には、自主的に取り組むような取組計画を出してもらうような形で運営しております。

以上でございます。

○高委員長 ありがとうございました。

○鹿野座長 他にいかがでしょうか。

樋口委員、お願いいたします。

○樋口委員 非常に積極的な取組をしておられるということで勉強させていただきました。

KPIについて一つ伺いたいのですが、これも大変重要な点だと思いますし、KPIということで実際に結果が確認できるということはすばらしいことなのですが、やや難しさもあるような気がしております。先ほど御説明の中でも具体的な数値目標のような形には余りしないとおっしゃって、それはおっしゃるとおりだと思うのですが、非常に細かいことで恐縮なのですが、例えばお客さま数は一つの重要な指標であることは間違いないと思いますが、例えば商品とか制度の変更、景気の影響、あるいは様々な意味で母集団の動向とか、高齢化の進み方といったことの影響もありそうな気がするので、プラスであったらいいということでは必ずしもなくて、場合によったら過去と比較したり、横並びというのはちょっと問題があるかもしれませんが、全体の動向の中で評価されるという方法もあるかなと。やや厳しい指標のような気もちょっとしました。

もう一つは好感度のところですけれども、好感度ではこれは14,000人の方にお聞きになっているということで、これはお客さま以外の方も含めて一般の方にアンケートをしているということなのでしょうか。

これは基本的にすばらしいことだと思いますが、読み方として我々は単純に数字を見てしまうこともあるような気もするので、多分ちゃんとこのレポート全体を読めば分かるのかなと思うのですが、少し気になったものですから、その辺を若干教えていただければと思います。

○明治安田生命保険相互会社後藤室長 御質問ありがとうございます。

この指標だけが全てということは全くなく、一つの取り組んだ結果として、KPIとしてこういうもので見ていきましょうという立て付けにしております。今、御質問いただいたとおり、お客さま数は商品や環境によって変わると思います。

加えて、見にくくて大変恐縮なのですけれども、参考資料3の脚注の※4に、例えば企業好感度については、回答者数14,100名のうち、当社のお客さまは1,158名ということで、当社のお客さまだけを選んで調査をやっている形ではありません。こういった情報も社外にお伝えしながら、白書を毎年出してKPIを公表する中で改善をしながら、他社のいろいろな良い取組も参考にしつつ、時期によっては経年を見るとともにKPIを切り替えるなどの見直しをする時期も多分何年かしたらあるのかと思いますので、引き続きPDCAの中から改善を進めていきたいと思っております。

○樋口委員 よく分かりました。

是非、こういったものをうまく工夫していただいて、次のステップの消費者志向経営を考えるときの材料にしていただければと思います。

ありがとうございます。

○鹿野座長 池本座長代理、お願いします。

○池本座長代理 非常に魅力的な取組を全社を挙げてやっておられるということに感心いたしました。

2点質問をさせてください。

机上配付で拝見させていただいた「お客さまの声」白書の後ろの辺りの資料編に、苦情受付状況でどういう苦情がどのぐらい件数があったということも含めてきちんと整理し、それも併せて公表されているということで、本当に見識を持った、プラス面、マイナス面も含めて公表しながらまた見直していく、それがまたお客さまの声をいろいろな角度で集めておられるのだな、と思います。こういった取組が、例えばこの苦情件数は2017年度ですけれども、5年なり10年なりという少し長いスパンの中で、消費者志向経営、お客さまの声を聞くという取組が苦情件数の推移に何か反映しているというようなところが読み取れることがこれまであったかどうかについてお伺いしたいという点が一つです。数字で何が何%ということでは難しいかもしれませんが、全体の受け止めておられる印象というようなことでも結構です。

もう一つは、これだけすばらしい取組を他でもみんなやってくださいと言っても、なかなか条件が難しいなと思いつつ、これをどうやったら更に広げられるのだろうなと思いながらお聞きしていました。

御説明の中では、顕彰制度によって、それは社会の信頼だけではない、社内的にも非常にそれがモチベーションになっているということをお伺いしました。ただ、顕彰制度と言っても、そこへ取組をして自分たちも申し込もうという行動に移るまでの、必ずしもそうでない中小企業も含めて、そういうところへこういった行動の何分の1かでも広げていくための動機付けをどうやったら広げられるのだろうかというところ、それこそ私たちが検討すべき課題ではあるのですが、何かヒントになることを教えていただければ幸いです。

以上、2点をお願いします。

○明治安田生命保険相互会社後藤室長 御質問ありがとうございます。

まず、苦情の件数につきましては、この白書の22ページに、お客さまからのお申し出の合計と、苦情の件数を載せております。苦情は39,900件と少なくない件数なのですけれども、昨年よりはかなり減っているという状況です。もちろん、状況によっては増える年もあるかもしれませんので、そのときには、対策として打った内容をこの白書で公表していくことになると思います。

2つ目の御質問なのですけれども、当社は2度の行政処分以降、いろいろな取組をしてきて、少しずつ積み上げた結果でここまできたと認識しているのですけれども、消費者志向経営の取組の柱、いわゆる検討会の報告書に記載された内容は、その全てについてスタートさせる必要はなく、例えば取組の柱の一つである経営トップのコミットメントから始めるなど、できることから導入していくことで消費者志向経営は進むと考えております。最初からフル装備で全てをやるということではなくて、会社の風土とか歴史というものを踏まえながら、効果的なやり方を、やれるものから導入していくことが大事なのかなと考えております。

それから、消費者志向経営の推進に必要と考えられることの一つは、個人的な見解になりますけれども、事業者にとって消費者志向経営に取り組むメリットや取り組まないデメリットがより明確になりますと、消費者志向経営の一層の普及につながると考えております。

例えば、主体は消費者志向経営推進組織、つまり、事業者団体、消費者団体、行政機関によって構成されるプラットフォームになるかと思いますけれども、一般消費者に対する消費者志向経営に関する周知・広報を強化いただくことにより、消費者志向自主宣言を公表している企業にとって、一般の消費者から当該事業者が選ばれる基準の一つになり得るかもしれません。

また、消費者志向経営を推進する事業者の成果物である商品、サービス等について、当WGの中間整理ではエシカル消費関連の商品について触れられていたと記憶しておりますけれども、この商品やサービスを行政が紹介したり、消費者団体が応援することなども有効ではないかと考えてございます。

以上でございます。

○池本座長代理 ありがとうございます。

今、おっしゃった後のほうの点、こういった取組を行っていることのメリット、デメリットをより明確化していくと御発言いただきまして、例えば、これを消費者団体がやるのか、行政がやるのか、誰がやるのかということはまだ分かりませんが、消費者志向経営という言葉の中に、それこそ自主宣言をするところから始まって、あるいはこういう取組があるということを、いろいろな分野のいろいろな取組、あるいは内容の濃淡はあると思うのですが、この企業は何をやっているということを見える化して、それをまた第三者がきちんと一覧できるものにしていくことで、消費者の側も選択できると。そういうようなものをイメージすればよろしいのかなという点。

それから、そういう自主的な行動、消費者志向経営をやっているということが、行政の側からもプラス面の評価、あるいはマイナス面の評価も含めて、何か踏み込んで位置付けをしていくことの意味、必要性というようなところについてはどういうふうにお考えか、もし御意見があればお伺いしたいと思います。

○明治安田生命保険相互会社後藤室長 繰り返しになりますけれども、やはり消費者志向経営に取り組んでいるということ自体を一般のお客さまに御理解いただくことが、会社を経営していく中では非常に重要なことだと考えております。また、経営だけではなくて、従業員も自分の会社がそういうものに取り組んでいるということは、トップ、従業員が一体となって取り組むもとになると思いますので、消費者志向経営をやっていることに対する行政側の評価等があれば非常に助かるという言い方は語弊があるかもしれませんが、消費者志向経営はあくまで事業者が主体に取り組んでいくものなのですけれども、支援になると考えております。

○鹿野座長 まだ御質問があるかもしれませんけれども、予定していた時間が参りましたので、それでは、明治安田生命保険相互会社からのヒアリングはこの辺りにさせていただきたいと思います。

明治安田生命保険相互会社様におかれましては、消費者志向経営に関する積極的な取組について御紹介いただきまして、私たちとしてもとても勉強になりました。また、最後のほうで池本座長代理からの質問にもありましたけれども、これをどういう形で他の企業にも広げていくかということについて、私たちとしても考えていきたいと思っているところですが、この点についての御示唆もいただきました。貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

○明治安田生命保険相互会社後藤室長 ありがとうございました。

(明治安田生命保険相互会社 退席)

(三菱地所グループ 着席)

○鹿野座長 続きまして、「事業者のコンプライアンス体制整備」の検討に関連しまして、三菱地所グループの皆様からお話を頂戴したいと思います。

本日は、参考人として、三菱地所株式会社法務・コンプライアンス部ユニットリーダーの吉村友宏様、環境・CSR推進部ユニットリーダーの糸多弘子様、それから、三菱地所レジデンス株式会社法務・CSR推進部シニアリーダーの重藤進様のお三方にお越しいただいております。

三菱地所グループにおかれましては、本年4月に消費者志向自主宣言を制定されており、消費者との間で積極的なコミュニケーションに取り組まれていると伺っているところです。

そして、グループ全体での様々な活動を表彰する「ひとまち大賞」制度を2011年に創設されており、「顧客志向賞」などを設定して、消費者目線での取組について推奨していらっしゃると伺っているところです。

また、グループ会社である三菱地所レジデンス株式会社におかれましては、今日も資料として御提出いただいておりますが、宅地建物取引における重要事項説明書について一般向けに分かりやすく解説した「重要事項説明書ガイドブック」を作成されるなど、取引相手となる消費者の理解を促す取組も行っていらっしゃいます。

こうした取組は公正な取引を実現するための方策として、事業者のコンプライアンス体制整備のあるべき姿を考える上で、非常に参考になるのではないかと考えているところです。

それでは、まず15分程度でお話しいただきますよう、よろしくお願いします。

○三菱地所株式会社吉村ユニットリーダー 三菱地所の吉村と申します。

まず、1番目のコンプライアンスについて御説明させていただきたいと思います。

私ども三菱地所グループでは、行動憲章というものを掲げておりまして、お配りしていますCSR報告書でいいますと、開いた2ページに記載しております。

3つ大きく掲げておりまして、「私たちは誠実に行動します」というものと、「私たちはお客さまからの信頼を得られるよう努めます」、3つ目に「私たちは活力のある職場づくりに努めます」、この3つを達成していくことをグループ全体の行動憲章として掲げております。中でも、2番目の「お客さまからの信頼を得られるよう」というところを最終的に目標としてやっていかなければならないという認識でおります。

当社は不動産ディベロッパー事業のグループとして、ビル事業、商業施設を中心とした生活産業の事業、マンションを中心とした住宅事業に、ホテル事業や空港事業等もやっておりまして、お客さまへの接し方というのはそれぞれというところもあり、基本的にはこの各社、各事業グループでそれぞれお客さまに対して対応していくということを行っております。

そのため、会社全体として何をしっかり共通のものとしてやっていくかということで、コンプライアンスを社員に浸透させて実践していくことが結果としてお客さまからの信頼につながって、行動憲章を達成していくということが非常に重要な考え方になっております。

お配りしたCSR報告書9ページに5つの重要テーマを掲げておりますが、その5つのうちの最後の1つがコンプライアンスということで、大きな重要テーマとしてコンプライアンスに取り組んでいるところです。

具体的な取組については、34ページ、35ページになりますが、その中の一つとして、今日はコンプライアンスアンケートについて少し具体的に御説明させていただきたいと思います。

資料のほうに戻らせていただきますと、「リスクマネジメント・コンプライアンス体制」と記載させていただいておりますが、CSR報告書34ページにもありますけれども、以前はCSR委員会の中でコンプライアンスについても取り上げておりましたが、中でもコンプライアンスについては重要ということで独立させて、CSR委員会とは別の委員会としてリスク・コンプライアンス委員会というものを回しております。

こちらは社長を筆頭に、全事業グループのトップ、常務以上全員が委員会に参加しまして、各社においては責任者を置いて、情報を共有しながらコンプライアンスが浸透していくようにし、トップにコミットさせるという形をとっております。

資料をめくっていただきますと、コンプライアンスアンケートの実施について記載させていただいております。

こちらは社員のコンプライアンス意識の浸透度や問題意識などを継続的に調査するということで、グループ全体では16,000名ほどおります、派遣社員も含めて全ての事務所にいる全てのスタッフにアンケートをとっておりまして、全体では隔年で実施、間の年は希望会社のみ実施という形で、2年に1度全体でのモニタリングをしております。

その中で質問として聞いているのは、自己診断ですけれども、先ほどの3つの行動憲章の達成度をどれぐらい達成しているかということ。また、行動憲章の下にある行動指針というものを今年改正しましたので、そういったものの浸透度や、経営陣や会社の取組がどうか、コンプライアンス意識が本当に現場で浸透しているかということと、行動憲章の3つ目の柱であります「活力のある職場づくり」ということで、職場の風通しはどうかということや、長時間労働やハラスメントがないかということを聞いております。

その中で、KPIとしましては、コンプライアンスアンケートの中で、先ほどの3つの項目に対して行動憲章の達成度はどうかということで、3つ平均しますと88%という数字になっておりまして、2016年度の数字がこちらに載っていますが、直近で今年度やったものでも同じ結果で88%となっております。

そのアンケートにつきましては、大きなデータとしては当然社員に公開しているものと、各社のデータを分析しまして、私ども法務・コンプライアンス部の事務局がトップの社長、全社のコンプライアンス責任者に面談をしてフィードバックするという形をとって、やりっぱなしということがないように、各社からそれに対する改善点や問題の発見というところを、トップの方とコミュニケーションをとって改善に努めていくということをやっております。

その他、資料に書かせていただいているところでは、「リスク・コンプライアンス講演会」というものは、当社における役員、部署長とグループ会社のトップを集めた講演会、研修のようなものと、社員に向けた「コンプライアンス研修」、その他、先ほどの行動憲章や行動指針について詳しく解説した「コンプライアンスガイドブック」を全グループ社員に配付ということをやっております。

そういった形で、コンプライアンスを大切にしてお客さまの信頼を得ていくということを、常日ごろから社長を中心にトップメッセージとして発信しています。

コンプライアンスについては以上になります。

○三菱地所株式会社糸多ユニットリーダー 続きまして、「消費者志向経営推進の取組み」ということで、先ほども御紹介いただきましたとおり、私どもは今年度2018年4月に消費者志向自主宣言というものを制定させていただきました。

実際には4月に制定したばかりで、これに基づきましていろいろな目標を個別に新たに設定して、またKPIを設定してPDCAを回すというところにまではまだ至っていないのですけれども、先ほど吉村からも話がありましたとおり、私どものグループにつきましては、事業領域がどんどん広がっておりまして、ビルや住宅のほかに設計、ホテルなどいろいろな分野でお仕事をさせていただいております。そういった意味でグループ全体においての顧客サービスの向上と、社員の一体感の強化というところでは、後ほどお話しします「ひとまち大賞」をはじめ、いろいろな形でお客さまとのコミュニケーションであったり、お客さまとの関係を強化するような取組はしてきておりました。制定にあたっては、それらを振り返って、改めて消費者志向自主宣言という形の文言でもう一度整理させていただきました。一回対外的に出させていただいて、これからまた改めて目標も設定しながら、いろいろな取組も更に広めていこうと思っております。

先ほども申しました「ひとまち大賞」につきましては、こちらは2012年創設とあるのですが、2011年の取組について12年から表彰を始めたということで2012年という表記になってしまっているのですけれども、書かせていただいておりますとおり、グループ全社員を対象にブランド向上に寄与した取組を募集して、選考の上表彰するというものでございます。

昨年度につきましては、グループ会社全体の中で31社、件数にしまして214件の応募がございました。これは部署単位で、一つの部署の中でも幾つ応募してもいいという形で、お客さまに対して新たな取組だったり、これは三菱地所グループのブランド向上に寄与した取組なのではないかというものを、それぞれ有志であったり、公式な部署単位でも、どういった形でもいいので応募できるという形式です。1年間に取り組んだものについて応募するということで、結果としまして、設定しております「誠実・信頼賞」「顧客志向賞」「価値創造志向賞」「チャレンジ志向賞」というものを、それぞれ約6から7件ずつで、全体で応募した中から30件受賞いたしました。

昨年度ですと昨年の1月から12月までの取組に対して、今年の3月に表彰式というものがございまして、応募した中から受賞した全員を招待しまして、ある一定の場所に全員で集まって社長から表彰を受けるという形になっております。

審査員は社長を初め、この「ひとまち大賞」を担当している経営企画部、広報部といった担当部署の者が選考検討した上で結果を出すという形になっております。

こちらは、日ごろからお客さまとのいろいろなコミュニケーション強化だったり、ブランド向上について意識を高めるとともに、一方で、グループ全体の一体感といいますか、表彰式のときには全グループの会社から表彰を受けた社員が集まりますので、そういったところでまた具体的にいろいろな情報交換をしたり、知り合いになって、新たな発想で新しい取組が生まれたり、いろいろな効果を生んでいるものと私どものほうとしては自負しております。

まだ18年度のCSR報告書が発行直前で、今日まだお持ちできなかったのですけれども、お手元のCSR報告書の18ページに[お客さまとのコミュニケーション]ということで、私どものグループの様々なお客さまとの間での取組を掲載させていただいております。実は「ひとまち大賞」は、ここのページではなくて31ページの「ひとづくり」というところで、私どもとしては、社員のいろいろな業務上の資質の向上という意味でも「ひとまち大賞」の取組について推進しておりますので、こちらの31ページのほうに掲載させていただいております。併せて御覧いただければと思います。

消費者志向経営推進の取組については、以上となります。

続きまして、公正な取引です。

○三菱地所レジデンス株式会社重藤シニアリーダー 私、三菱地所レジデンスの重藤といいます。今日はよろしくお願いいたします。

私ども三菱地所レジデンスは、三菱地所グループの中で住宅事業部門となります。一戸建てやマンションの分譲事業を主に行っております。

本日は、その分譲事業の中でとても大切な広告活動や、売買契約における重要事項説明の資料について御説明させていただきます。

まず、あらかじめお配りさせていただいた「重要事項説明書ガイドブック」という冊子について御説明をさせていただきますと、マンションや一戸建ての売買、販売においては、宅地建物取引業法において、購入者の方に御購入予定の不動産についてあらかじめ詳しく説明しなければならないと定められています。

私たちは重要事項説明を行うに当たって、重要事項説明というのは不動産に関するとても大切な建設の内容や契約条件といったものがいろいろ細かく書いてありまして、2時間ぐらいかかってしまいます。専門用語も多く、初めて重要事項説明を聞かれた方にとって、一度で内容をすぐ理解することがなかなか難しい内容となっております。

このため、御説明を受けていないといったトラブルが発生することも少なくなくて、当社としても契約後のトラブルをなくして、御購入いただいた方に安心して、かつ御納得していただいて御購入いただくためには、重要事項の説明の御理解がとても重要だと考えております。

このような理由から、当社では10年前からこの重要事項説明書をお客さまに配付して、重要事項の説明と売買契約に臨むようにしております。

具体的には、重要事項説明をさせていただく3日前までに、このガイドブックと御購入いただく予定の重要事項説明書を御購入予定のお客さまにあらかじめお渡しさせていただきまして、その3日後に重要事項説明を実施する。さらに、売買契約に当たっては、この重要事項説明書とガイドブックの配付から5日後以降に売買契約を結びなさいと社内ルールで決めております。

ですから、トータルですと、一つのマンションを御購入いただくまでに最低でも5日はかかってしまうということになりますが、書類をお渡しする手続や御購入者の方のお仕事の関係、御予定等がありますので、実際には一つのマンションを御購入いただくに当たって、期間的には10日とか2週間ぐらいかかってしまう場合も少なくありません。

また、この「重要事項説明書ガイドブック」の制作に当たっては、NPO法人の消費者支援機構関西、ケーシーズの方に実際に重要事項説明の場面を体験いただくなどして、ケーシーズからの御意見、御提案を踏まえて作成しております。

内容は御覧いただいたとおり、イラストなどを盛り込み分かりやすいものとしておりまして、御購入者の方の重要事項説明の一助になるものと考えております。

次に、「不動産広告マニュアル」につきましては、当然不動産業界では、不動産の表示に関する公正競争規約が、御存じのようにございますが、その不動産公正競争規約の内容を踏まえて、実際に社内において販売に携わる者、広告に携わる者が広告規制や関係法令を理解して、広告表現に関する様々なトラブルを防止するために作成しております。

また、こういった広告関連につきましては、関係法令の改正、社内規定や社内ルールの変更等もありますので、そういった変更があるたびに更新しております。

この「不動産広告マニュアル」は当社発足当時から活用しておりまして、社内浸透させるために年1度の研修、また、社内イントラを使って情報発信をしております。

マニュアルに記載されていないことや判断に迷うことがあった場合は、都度、首都圏不動産公正取引協議会のほうに御相談させていただいております。

また、広告マニュアルを遵守していただくために、発注する広告代理店や私たち三菱地所レジデンスと共同事業を行う他社、共同事業者に対してもこれを配付して、内容を守っていただくように都度お願いしている形となります。

例えば、新しい新築分譲の広告活動を開始するに当たっては、まず初めに皆さんに集まっていただくような会議があるわけなのですが、その際にこの広告制作マニュアルを配付して、この内容の浸透を都度図るという形をとっております。

また、その浸透を図る上でも、広告代理店の方に優良でかつ効果的な広告表現を行っていただいた広告代理店などを表彰する制度も行っておりまして、そういった機会をもってこういった制作マニュアルの浸透を図るという形をとっております。

私のほうからの御説明は以上となります。

○鹿野座長 どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの御報告、御説明を受けて、御質問、御意見等がある方はお願いします。

高委員長、どうぞ。

○高委員長 業界のことがもし分かれば教えていただきたいと思います。

先ほどの重要事項説明書ガイドブックの件なのですが、10年前、2005年ごろですけれども、不動産業界全体とすると、売買契約を結ぶ直前の段階で一気にやって済ませてしまう。つまり、消費者側は余りよく分からないで契約を締結してしまうという状況の中にあって、御社はそれではいけないということで、業界の中で真っ先にこの取り組みを始めた。先ほどトラブルと言いましたけれども、トラブルというよりもこの方向で行こうという意味も込めてやられたのだと思うのですが、契約書そのものを、契約を結ぶ3日前に送られて、そのガイドブックもそれよりも以前にお渡しするということなのでしょうけれども、こういう取組を私は高く評価しているのですが、業界全体、特に大手には広がっているのでしょうか。それとも、まだ御社だけがやっていることなのでしょうか。

分からなければお答えは結構ですが。

○三菱地所レジデンス株式会社重藤シニアリーダー 御質問ありがとうございます。

御存じのように、法律上では不動産売買契約の前までに重要事項説明をしなさいという形で定められております。ですので、不動産業界全体とすれば、時間を長く取ると、様々な不動産がありますので、お客さまは選択肢が多いですので、競合が増えてしまったりします。なので、余り長く時間を取るということをよしと思っていないところが昔はあったのかもしれないです。

業界全体に当社の取組が浸透しているかどうかについては、私は当社しか知らないものですから、他の会社は何とも言えないのですけれども、個人的には余り聞いたことはないです。

○高委員長 少なくとも業界団体として、できるだけ早い段階から理解できるように説明をしていこうというような申し合わせは特にないということですね。

○三菱地所レジデンス株式会社重藤シニアリーダー 共同事業主、例えば大きいプロジェクトになりますと、大手不動産業者が複数集まったプロジェクトなどがございます。そういったところでは当社のルールでやってくださいというような形でルールをそろえて、こういった売買契約に取り組むという形をしているのと、たしか不動産流通業界で中古の売買については、ある程度の大手が集まった団体がございますので、そちらのほうでもルールを定めてやっていると記憶しています。記憶が定かではなくて申し訳ないです。

○鹿野座長 よろしいでしょうか。

他にいかがでしょうか。

私からも1つお伺いしたいと思います。

本日は積極的な取組についてお話しいただきまして、ありがとうございました。

今日のお話の中でも、グループ会社ということで、グループ会社がどのようにしてコンプライアンスを維持していくのか、リスク管理をしていくのかということについてお話しいただいたところが、私にとっては非常に興味深いところでございました。

ただ、先ほども言及されましたように、グループ会社の中でもそれぞれいろいろな事業を展開していらっしゃるので、その事業の内容によって異なる事情があると思うのですが、そういう異なる事業の状況などについて情報交換をしたり、あるいは適切なアドバイスをしたりということは、いただいた資料3-1でいうと、2ページ目の協議会といったところで行われているということでしょうか。どういう形でどのような頻度で行われているのかということをお伺いしたいと思います。

○吉村ユニットリーダー 御質問ありがとうございます。

こちらのリスク・コンプライアンス委員会、協議会は年に4回行っておりまして、主に重要な事項や全体に共有したいことを行う場になっております。

各事業グループ、例えばホテルではホテルなりの悩みみたいなものがありますし、住宅は住宅ということがあるので、こちらは資料の文字が小さいのですけれども、三菱地所の中にリスクマネジメント推進責任者、ラインスタッフ部署などと書いてありますが、事業グループごとにラインスタッフという者がおりまして、そちらのほうにリスクマネジメント、コンプライアンス、自分の統括している事業グループの取りまとめ役がいまして、そこが情報を共有して横並びにリスクを見たり、コンプライアンスの浸透度を見たり、各社の事情も見ながら一次的にやりまして、私ども法務・コンプライアンス部がグループ全体を見ているところで、それぞれから相談があって対応したりということで、事業に合ったような形でやっていくということを組織としてはやっております。

ですので、そういったふだんの個別のものは、事業グループごとにこのラインスタッフ部署を中心にやるという形になっております。

○鹿野座長 ありがとうございました。

もう一つ関連して、質問させてください。先ほど、三菱地所レジデンスにおかれまして、非常に分かりやすい重要事項説明書のガイドブックをお作りになっており、しかも社内のルールとして事前にお渡しして、しっかりと読む機会を与えた上でないと契約はしないというような流れでやっていらっしゃるというご説明をいただきました。私もこれはすばらしい取組の一つだと思うのですが、このようなことについては、この事業でお考えになるということなのですか。それとも、グループ事業で全体的な方針はこうだというところで作っていって、その一環としてこのような取組が生まれたということなのでしょうか。両方ともあるのかもしれませんが。先ほど、トップがコミットするということは重要だともおっしゃったのですが、これをグループ内のいろいろな事業において浸透させるために、どこがキーになるのかなと思っていまして、何かヒントをいただければと思います。

○三菱地所株式会社吉村ユニットリーダー 内容によってケース・バイ・ケースであると思います。

マンションの契約を扱っているのは三菱地所レジデンスがほとんどメインで統括しておりますので、やはり三菱地所レジデンスの取組としてやっていったということになりますので、親会社がトップダウンでやれと言ったというよりは、その会社に合った形で会社のほうで企画、立案してやっているという内容になります。

ただ、当然共通するもので、こういった取組も情報共有の場等がありましたら、他の事業グループで使えるものがあれば使っていくというようなことは、先ほどの委員会、協議会等で情報共有しながらやっていくということになりますけれども、基本的には各社の中で、価値観としてコンプライアンスを植えつけて、それに基づいた行動をするという考え方です。

○鹿野座長 ありがとうございました。

私が余り質問時間を取るべきではなかったかもしれません。すみません。

池本座長代理、お願いします。

○池本座長代理 御説明ありがとうございます。

御報告を聞いていた感想として、リスク・コンプライアンス委員会というふうに、コンプライアンスの問題はリスクマネジメントそのものなのだということをきちんと位置付けて、名称にまでそこを入れておられるというのは本当に見識だと思いますし、こういう名称をつければ、他の企業も自社のリスクマネジメントは絶対避けて通れない。それが正にコンプライアンスの経営だという意味で、この名称自体をもっと普及させるべきだと私は感じました。

しかも、消費者志向自主宣言の中でも、トップのコミットメントやコーポレートガバナンスということが前に、1番目、2番目に出ているというところも今の考えとつながっているのかなとも私は受けとめたのですが、特にこの消費者志向自主宣言をお作りになるのに当たって、今のリスク・コンプライアンスのこれまでの取組の考え方と、これを作っていくということについて、どういうふうな位置付けを議論されたのか、もしその辺りがあれば教えていただきたいと思います。

○三菱地所株式会社糸多ユニットリーダー 先ほど吉村からありましたように、もともと行動指針ですとか基本的な三菱地所グループとしての基本使命というところが根底にございまして、そういったところの中で、これまで日常的に私どもが事業を通してお客さまといろいろなコミュニケーションをさせていただく中で、ホームページですとか冊子とか、いろいろな形で発信させていただいている文言がいろいろあるのですけれども、そういったところをすり合わせしました。

私どもとしては、これまでもそういったお客さまとのコミュニケーションについては積極的に取り組んできたという自負がございましたので、改めて何か新しいことをこの宣言で盛り込もうというよりは、これまで発信してきた言葉と、基本使命や行動指針といった中で述べられていることをすり合わせしまして、それを並べ直して、改めてこういった宣言という形で出させていただくというような形で今回は作らせていただきました。

○鹿野座長 よろしいですか。

他にいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、予定した時間も過ぎてしまいましたので、これにて三菱地所グループの皆様からのヒアリングは終わらせていただきたいと思います。

本日は、お忙しい中、御出席いただき、また、積極的な取組について御報告をいただきまして、どうもありがとうございました。

○三菱地所株式会社吉村ユニットリーダー ありがとうございました。

○鹿野座長 本日の議事は以上です。


≪4.閉会≫

○鹿野座長 最後に、事務局から事務連絡をお願いします。

○坂田参事官 本日も長時間にわたりまして御議論いただき、誠にありがとうございました。

次回の日程につきましては、改めて御連絡させていただきたいと思います。

以上です。

○鹿野座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。

お忙しいところ、御参集いただきまして、誠にありがとうございました。

(以上)