平成30年8月28日(火)

 今朝の閣議では,法務省案件はありませんでした。
 私から2件御報告します。まず,障害者の雇用の問題です。法務省においては,平成29年6月1日時点の障害者雇用の状況について,厚生労働省から要請を受けて再点検を実施しています。本日,その結果が他府省の再点検結果と併せて取りまとめられ,厚生労働省から公表されましたので,この点に関して御報告します。
 まずは,法務省の障害者雇用の状況について,再点検結果を踏まえて御説明します。平成29年6月1日時点の障害者雇用の状況については,平成29年当時の公表内容では,障害者の数が「802人」,雇用率が「2.44パーセント」でしたが,今回の再点検の結果,障害者の数が「262.5人」,雇用率が「0.80パーセント」となりました。
 法務省においては,障害者の人権に関する啓発活動を始めとした,省としての障害者施策に取り組むとともに,障害者雇用など政府全体の障害者施策にも取り組んでまいりました。特に障害者雇用に関しては,障害者雇用促進法に則り,障害者を職員として雇用し,厚生労働省に報告してまいりました。しかし,この報告制度の対象となる障害者の範囲に関し,障害者手帳の交付がなくとも,他の資料から障害を確認できるのであれば雇用を促進すべき障害者に当たり,制度の対象になるものと誤解しており,その結果として,本来,制度の対象とならない職員を障害者として計上・報告する事態となったものです。
 法の支配の実現を使命とし,また,障害者の人権啓発に取り組む法務省の長として,そのような誤解があったことを含め,法務省がその責務を十分に果たせていなかったことは,誠に遺憾です。
 本日,閣議の前に,「公務部門における障害者雇用に関する関係閣僚会議」が開催され,法務省を含め,多くの行政機関等で法定雇用率が達成されていない状況であったことが明らかとなった事態を重く受け止め,政府一体となって,再発防止はもとより,障害者の雇用の推進等に向けた取組を更に進めることとなりました。
 具体的には,関係府省連絡会議の下に,弁護士など第三者も参画した検証チームを設置し,今回の事態について検証を行い,本年10月中を目途に,政府一体となった取組の取りまとめを行うこととなりました。
 法務省としては,こうした政府の方針の下,障害者の雇用の推進等を図るため,取り得る措置を最大限講じることによって,その責務を果たすよう努めてまいりたいと考えています。
 2点目ですが,8月29日(水)から実施する「全国一斉『子どもの人権110番』強化週間」についてお知らせします。全国の法務局・地方法務局では,子どもの人権を守るための相談活動として,専用相談電話である「子どもの人権110番」0120-007-110を開設していますが,8月29日(水)から9月4日(火)までの7日間を,「全国一斉『子どもの人権110番』強化週間」として相談活動を強化することとします。
 この強化週間の取組は,例年,6月末から7月初旬にかけて行っていたものですが,夏休みの終了が,学校での生活に悩みを抱える児童・生徒の心に影響を与え,不安定な精神状態になることが考えられるという実情があることを踏まえ,今年度から,夏休みの終わりから二学期の頭にかけて実施することとしました。同期間中,通常は,平日の午前8時30分から午後5時15分までとなっている相談受付時間を,午後7時まで延長するとともに,土曜・日曜についても,午前10時から午後5時までの間,相談を受け付けます。
 法務省の人権擁護機関としては,こうした強化週間などの取組を通じて,悩みを抱え助けを求めている子どもたちからのSOSのサインを見逃すことがないよう万全を期し,子どもたちの人権を守るための活動を進めてまいりたいと考えています。
 報道機関の皆様には,一人でも多くの子どもたちを救うことができるよう,この専用相談電話「子どもの人権110番」及び強化週間の取組をより多くの方々に知っていただくことに御協力をお願いします。

障害者雇用水増し問題に関する質疑について

【記者】
 障害者の水増し雇用問題について2点伺います。まず,今回の再点検の結果,障害者雇用率の算定の基礎から外れることになった職員は,元々,どのような根拠により障害者だと確認されていたのでしょうか。

【大臣】
 今回の事態を受け,法務省では,対象から外れた職員について,それぞれ,どのような資料によって障害者と確認されていたのかを調査しました。その結果,対象から外れた職員については,(1)障害者手帳以外の資料,具体的には,医師の診断書や健康診断結果によって確認されていた職員,(2)職員本人の申告によって確認されていた職員,(3)任地を異動した職員につき,障害者である旨の引継ぎが前任地の担当者からされていた場合など,従前からの引継ぎにより障害者と確認されていた職員,(4)障害者手帳によって確認されていた刑務官や入国警備官で,刑務官等は法令上,制度の対象外とされているため,障害者手帳があったとしても対象から外れることになった職員の4つに分類されたものです。
 制度の対象となる障害者の範囲を誤解し,制度を適正に運用できていなかったことは事実であり,この点については誠に遺憾です。
 政府においては,関係府省連絡会議の下に,弁護士など第三者も参画した検証チームを設置し,今回の事態について検証を行い,本年10月中を目途に,政府一体となった取組の取りまとめを行うこととされ,法務省としてもこのような検証に積極的に協力してまいりたいと思っています。

【記者】
 法定雇用率を大きく下回ることになりましたが,今後,達成に向けて,具体的にどのように取り組むのか教えてください。

【大臣】
 今回の再点検の結果,法定雇用率を達成するためには,相当数の障害者の方々を新たに雇用する必要があることが判明しました。このことについては,深刻に受け止めています。
 今般,関係閣僚会議の下に,厚生労働大臣を議長とする「公務部門における障害者雇用に関する関係府省連絡会議」が設置され,法定雇用率の速やかな達成に向けた計画的な取組等について,政府一体となって検討することとされました。法務省としても,法定雇用率を早急かつ確実に達成することができるよう,省内の実情や障害者の方々の希望等を把握しつつ,その検討に積極的に参画してまいりたいと考えています。その際,定員や予算等について必要な事項が生じれば,関係府省とも協議していきたいと思っています。
 また,職員に対して,改めて障害者雇用制度の趣旨や内容を周知し,適正に障害者の方々を雇用するよう努めてまいりたいと考えています。
 法務省としては,今回の再点検の結果を重く受け止めており,政府一体としての検討を踏まえつつ,障害者の雇用促進及びその職業の安定を図るため,その責務を十分に果たしてまいりたいと考えています。

【記者】
 先ほど大臣から「誤解していた」という説明があったと思いますが,意図的な水増しがされていたということはないのでしょうか。

【大臣】
 厚生労働省のガイドラインによると,制度の対象とならない職員を障害者として計上していたものであり,この点については大変遺憾であると考えています。今回,調査をする中で,当省の人事担当者においては,当該ガイドラインについての認識が十分でなく,制度の対象となる「障害者」の範囲に関し,障害者手帳の交付を受けていなくとも,他の資料から障害を確認できるのであれば「障害者」に当たるとの誤解があったため,結果としてこのような計上になったものと考えられ,意図的な水増しでないものと承知しています。しかし,制度の対象外の職員を障害者として計上したことは事実であり,今後,より一層適正に,制度の対象となる障害者であることを確認していくことは極めて重要であると考えています。

【記者】
 意図的な水増しではなかったとするのであれば,その根拠についてお聞かせください。

【大臣】
 まず,障害者の雇用状況についての厚生労働省への毎年の報告に当たりましては,厚生労働省のガイドラインがその都度送付されてはいませんでした。結果として,担当職員において,同ガイドラインの認識が十分ではなかったと承知しています。
 他方,厚生労働省からは,毎年,報告要領に係る文書が送付されており,その内容によると,ガイドラインとは異なり,障害者手帳による確認が必須ではなく,他の資料により障害を確認できる場合も障害者に計上できると解釈できる余地もあったため,担当職員においてその旨誤解して障害者手帳の確認がなくとも他の資料から障害者に計上したという事実がありました。このような経緯について,先ほどいくつか分類した項目がありますので,更に調査を加え,また政府全体としての検証も加えて,その上で再発防止に取り組むということですので,法務省における取組の実態について調査をしていきたいと思います。

【記者】
 制度の対象ではない職員を対象として扱っていたために,本来,制度の対象となる障害者の雇用の機会が奪われた旨の指摘がありますが,その点について大臣の御所感をお聞かせください。

【大臣】
 御指摘の件については大変重く受け止めており,誠に遺憾であると思っています。制度の対象外の職員を対象とした結果,法務省の障害者雇用率が法定雇用率を上回っていたために,障害者を更に雇用する動機付けが弱まった可能性は否定できず,その意味では雇用のチャンスを奪った事態について,誠に遺憾に感じているところです。
 再点検の結果を大変重く受け止めていますが,今後,第三者を含めた検証作業も早急に行われるということですので,積極的に協力して,法務省の中でも先ほど申し上げた分類の中で,実態について更に調査を進めながら,協力をしてまいりたいと思っています。その上で再発防止に全力で取り組んでまいりたいと思います。

平成31年度予算概算要求に関する質疑について

【記者】
 本月31日で来年度の概算要求が締め切られます。法務省では,来年4月の運用開始を目指す新たな在留資格創設に向け,入国管理局を「庁」へ格上げすることについて検討されているかと思います。現在の検討状況と,概算要求に関連費用を盛り込むかどうか等について,大臣のお考えをお聞かせください。

【大臣】
 新たな在留資格の創設については,来年4月の外国人材の受入れ開始を目指しているところであり,関係省庁等と連携して所要の準備を進めているところです。これに合わせて,法務省としては,入国管理局の組織体制を抜本的に見直し,法務省の外局として,「入国在留管理庁」(仮称)を設ける方向で最終的な調整を図っている状況です。また,それに伴い必要となる関連経費についても,概算要求に適切に盛り込むよう検討しています。
 

子どもの人権110番に関する質疑について

【記者】
 「子どもの人権110番」についてお伺いします。強化週間の時期を変更したのはなぜか,また,本年7月の児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策において,「子どもの人権110番」を始めとする相談窓口を児童虐待の早期発見のために活用するとされていますが,今回の強化週間において何らかの取組を行うのでしょうか。

【大臣】
 夏休みの終了が,学校での生活に悩みを抱える児童・生徒の心に影響を与え,子どもたちが不安定な精神状態になることが考えられるところです。
 これまで夏休み前に取り組んできたところですが,夏休み明けの9月1日前後に18歳以下の自殺者が急増することが明らかになっており,特に10代前半の若者の自殺は事前に予兆がないことが多く,「子ども自らが周囲に悩みを打ち明けやすい環境を作っていくことが一層重要となる」とされていることを踏まえ,9月1日前後に自殺が急増するであろうと予想される事態に,その防止に,少しでも役に立つことができるように,夏休みの終わりから二学期の頭にかけてのこの期間に実施することにしたところです。
 また,御指摘のありました児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策において,「子どもの人権110番」等をこれまで対象者本人にしぼっておりましたが,その兄弟姉妹等の近親者に対する児童虐待を発見するための手段としても積極的に活用してまいりたいと思っています。
 本強化週間では,相談受付時間の延長と,土曜・日曜の対応を積極的に進めてまいりたいと思っています。相談体制の強化は,緊急総合対策に掲げられた児童虐待事案等の早期発見にも資するものであると考えており,積極的に進めてまいりたいと思います。
 

(以上)