平成30年10月10日(水)

 今朝の閣議では,法務省案件はありませんでした。
 続いて私から一件報告があります。法務省は,現在,法の支配を国際的に浸透させること等を目的として,法務分野における国内外の施策に総合的・戦略に取り組む「司法外交」を推進しているところです。
 昨日私は,第57回アジア・アフリカ法律諮問委員会(AALCO),これは先般御説明したように,アジア・アフリカ地域の唯一の法律諮問機関ですが,この年次総会に出席しました。このAALCOでは,閣僚級を含む33か国からの出席者に向けて,法務大臣として,法の支配や司法外交推進への決意について英語で宣言しました。
 また,2020年に開催予定の,刑事司法分野における国連最大規模の国際会議である京都コングレスについても,改めて幅広い参加を呼びかけました。
 なお,このアジア・アフリカ法律諮問委員会の機会を利用して,南アフリカ共和国など4か国の閣僚と二国間協議を行い,法務分野において,今後更なる協力関係を築いていくことを確認しました。
 加えて,インドネシア法務人権省との間では,これまで法務行政における両国の包括的な相互協力についての枠組みを定める協力覚書(MOC)を交わすための協議を続けてきたところ,その内容について合意に至ったので,本日午後,法務省において,来日中のヤソンナ・インドネシア法務人権大臣と私の間で,協力覚書の署名・交換をさせていただきたいと思っています。
 これまで,法務省では,技能実習などの個別分野における協力覚書を交換した実績はありますが,法務行政全般について,外国の法務省との間で協力覚書を交換するのは,今回が初めてということになります。
 そして,そのような初めての協力覚書の相手方であるインドネシアに対しては,裁判制度や知的財産制度等において法制度整備支援などをしており,日本と強い友好関係にあります。また,今年は,日インドネシア国交樹立60周年という節目の年です。こうした年に署名できることは,大変喜ばしいことと考えています。
 この協力覚書の下,法務省及びインドネシア法務人権省は,法の支配や民主主義という共通の価値を共有するパートナーとして,それぞれの国の法務分野における協力及び相互支援の増大を目指し,これまでの良好な関係を更に発展させていきたいと考えています。
 

インドネシア法務人権省との協力覚書に関する質疑について

【記者】
 先ほどおっしゃったインドネシアの法務人権省との協力覚書の内容を教えていただきたいのと,その交換によって具体的にどのような協力が進むのかを教えてください。

【大臣】
 協力覚書の内容については,先ほど申し上げたとおり,法務省とインドネシアの法務人権省との間で,法務分野における包括的な協力を一層発展させるということを目的としています。ですので,例えば,出入国管理行政,施設内処遇,刑務所など,あるいは社会内処遇,わが国では保護観察という制度がありますけれども,そういった両方を含む犯罪者処遇であるとか,あるいは,これまでも提供していましたが,民商事分野における法制度整備支援,さらには,人権の促進及び保護などの分野について,情報共有であるとか,知見の交換,我が国の経験もありますから,それを行うことを内容としています。
 具体的な協力について,両省は,今後,協力覚書に基づいて,法の支配や民主主義という共通の価値を共有するパートナーとして,先ほど申し上げた分野において,共同セミナーや研修,共同研究を実施したり,あるいは人材交流をしたり,あるいは日常的な情報の交換を行くものと考えています。
 インドネシア側のニーズに的確に応えることができるよう,今後,担当官の間で協議がなされると承知しています。具体的なMOC,協力覚書の本文については,署名が無事整いましたら,法務省ウェブサイトで公開予定ですので,御案内しておきます。
 

法制審議会による民事執行法改正案の要綱の答申に関する質疑について

【記者】
 法制審議会が4日,離婚に伴う子どもの引渡し手続の明確化などを盛り込んだ民事執行法改正案の要綱を大臣に答申しました。社会に与える影響が大きい分野ですが,意気込みと,国会提出に向けた手順を教えてください。

【大臣】
 民事執行法制の見直しについては,平成28年9月に法制審議会に対する諮問をしています。そして,民事執行法部会で調査審議が行われてきたところであり,御承知のように,平成30年10月4日,法制審議会総会において要綱が決定され,答申がされました。
 そして,この要綱というのは,債務者財産の開示制度の実効性を向上させる,不動産競売における暴力団員の買受けを防止する,そして子の引渡しの強制執行に関する規律を明確化するということで,民事執行法制の利便性をしっかりと高めるという見直しを行うというものです。
 これらの民事執行法制の見直しは,国民に身近で頼りがいのある司法の実現につながるものです。
 また,お尋ねにも含まれていた子の引渡しをめぐる強制執行制度の見直しに関しては,要綱では,強制執行の実効性を確保しながら,お子さんの心身の負担にも最大限の配慮をする,そして,子の利益の保護に資する規律が盛り込まれていると受け止めています。
 こうした内容の答申を受けた訳ですが,この要綱に基づく関係法案の立案というのは,今後,関係当局,民事局を中心に行い,しかるべき時期に,国会に提出することができるよう,準備を進めてまいりたいと考えていす。
 

新たな在留資格に関する質疑について

【記者】
 外国人労働者向けの新たな在留資格についてお伺いします。出入国管理の観点から,日本から強制退去となった外国人の身柄を引き取らないような国からは受入れをしない,また,濫用的な難民認定申請や不法滞在者が多い国の外国人については在留資格を厳格に審査するという一部報道がありました。そのような方向で検討されているのか,事実関係について教えてください。

【大臣】
 新たな外国人材の受入れについては,今,制度設計をどうするかという検討をしているところです。それについては,新たな制度であるが故に,慎重にすべきところは慎重に考えなくてはならない,不法残留をいたずらに生むような制度であってはならないと考えています。
 そうした中で,現状においては,不法残留者が4年連続で増加し,不法就労に従事しているとみられる不法滞在者がいまだ多数存在しています。また,難民認定申請を濫用したり,送還を忌避する者も少なからず存在するという問題があると認識しています。
 法務省においては,先ほど申し上げましたように,新たな外国人材の受入れ制度について,新しい制度として検討中ですが,そうした中で,国際慣習法上認められている被送還者の自国民引取義務を適切に履行していない国からの受入れは行わないことを検討しています。
 また,不法滞在,送還忌避,濫用・誤用的な難民認定申請や,我が国の出入国管理上支障を生じさせている国からの受入れに関しても,この,新たな受入れに関しては,入国管理局において慎重に審査を行った上で許否判断を行うなどの対応も検討しているところです。
 先ほども申し上げたとおり,新たな外国人材の受入れについては,不法滞在者等が増加することがないよう,適切な制度設計を行っていきたいと考えています。
 

(以上)