平成30年10月16日(火)

 今朝の閣議では,法務省案件はありませんでした。
 続いて,私から3件御報告があります。1件目は補正予算です。昨日の臨時閣議で,平成30年度補正予算の政府案が決定されました。
 この政府案には,災害からの復旧・復興のための経費ということで,法務省所管分は約2億円(2億1,300万円)が計上されています。
 その内容というのは,「平成30年7月豪雨」の被災者の方々に対して,日本司法支援センター(法テラス)において,資力の有無を問わず,無料法律相談を提供するための経費です。
 法務大臣として,被害を受けた地域の復旧・復興のため,平成30年度補正予算案が次期臨時国会において速やかに成立することを期待しており,被災者の方々の被害回復・生活再建の一助となるよう,法務省所管の予算を効果的に活用していく所存です。
 2件目は,10月12日に東日本入国管理センターを視察したことです。この東日本入国管理センターの被収容者については,ほぼ全員が送還を忌避し,収容期間の長期化が顕著となっています。そういった中で,法執行を適正に果たすという使命感を抱きながら困難な職務に日々精励している職員の皆様には,本当に感銘を受けました。その上で,被退去強制者の収容・送還をめぐる諸課題に取り組んでいきたいと意を新たにした次第です。
 そこで,今般の視察結果を踏まえて,特に早期に取り組んでほしい事項として,昨日,入国管理局に対して次の4点を指示しました。1点目は,収容施設のシャワー室内において破壊行為などの非違行為が続出しているということがあり,視察の際に汎用ビデオカメラの設置が行われていたのですが,非違行為を防止する方法としての汎用ビデオカメラによる監視を止めるということ。一方で,破壊行為は防止しなくてはならないということで,個人のプライバシーになお一層配慮した具体策を検討した上で,速やかに実施すること。2点目は,処遇環境の改善を図るため,多言語による案内を充実すること。例えば,収容施設内に設置された提案箱等の標識についても主要な言語による数か国語の併記によること。また,図書,運動用具等の整備や日中の運動時間の拡大などを通じ,収容中の生活環境の向上に努めること。3点目は,面会室,待合室などの環境美化を図るとともに,面会に来訪した幼少者などに配慮した各種備品の配置を行うこと。4点目は,収容期間の長期化に伴う被収容者の医療上の問題に適切に対応するため,次年度予算要求において医療面での改善のために必要な経費を関係当局の理解を得て確保できるよう努めること。以上,4点について指示しました。
 3件目は,今朝,ベトナムの最高人民検察院のレー・ミン・チ長官が法務省を訪問し,ベトナムの最高人民検察院と私たち法務省との間で,より緊密な連携を図っていくということなどについて会談しました。

名古屋入国管理局中部空港支局視察に関する質疑について

【記者】
 本日,名古屋入国管理局中部空港支局を視察するとのことですが,視察の目的についてお聞かせください。

【大臣】
 我が国の観光立国推進施策によって,中京圏の空の玄関口である中部国際空港でも,近年,出入国者数が増加しており,日本人,外国人を合わせた出入国者は約550万人に上っています。
 さらに,中部国際空港では,来年6月にLCCターミナルの新設が予定されており,これにより出入国者数が更に増加し,入国管理局の出入国審査業務も増加していくことが見込まれます。
 入国管理局においては,これまで顔認証ゲートやバイオカートなどの新しい技術を活用した機器の導入や人的体制の整備を図ることなどにより,厳格な水際対策を実施しつつ,より一層円滑な出入国審査に努めているところ,今回,その状況をしっかりと実際に確認したいと思っています。

東日本入国管理センターに関する質疑について

【記者】
 先ほど大臣がおっしゃった入管の監視カメラについて,大臣の指示により敢えて外させたのは,人権侵害という指摘に対応したものなのでしょうか。また,もし同じような破壊行為があった場合は,どのように対応されるのかお聞かせください。

【大臣】
 先ほど申し上げたとおり,東日本入国管理センターにおいては,シャワー室内での破壊行為が度々なされていました。当該行為の防止とともに行為者を特定するために,やむなく一時的に汎用のビデオカメラを設置したと承知しています。具体的な設置の状況については,構造上の守秘もありますが,職員が通る廊下側から下部が映らないような角度に工夫をこらしていました。このように,ビデオカメラの設置に当たっては一定の工夫がなされていたところですが,破壊行為の防止という目的に鑑みると,その方法について被収容者のプライバシーに対する最大限の配慮が必要であると考え,それに代わる方法によることが適当ということで指示をしたものです。
 今後同じような破壊行為が行われた場合にどのように対処するかということですが,今日現在,監視カメラによる監視はやめさせています。他方で,破壊行為が故意によって行われることは犯罪であり,その結果,他の被収容者もシャワーを使えなくなるという収容上の問題も起きることとなるので,しっかりと防止しなくてはならないと考えています。そのために汎用のビデオカメラの監視に代わる他の方法を検討させることとしており,いずれにしても汎用のビデオカメラを再び設置することは考えておりません。
 その上で,破壊行為が行われた場合には,直ちに把握でき,かつ,プライバシーの侵害が少ない方法を検討させており,そのような事案が発生した場合には,速やかに調査を尽くした上でその旨を公表するとともに,その行為者が特定されたときは,応分の民事賠償を求め,場合に応じて刑事告発を行うなど厳正に対処する,ということです。

【記者】
 東日本入国管理センターの件に関連してお伺いします。先ほど3点目と4点目で御紹介いただいた「面会室の美化と各種備品の配置」と「医療上の問題の改善」ということで,具体的にどういった措置を講じたのかお聞かせください。

【大臣】
 まず,3点目の面会室,待合室の環境美化を図るというのは,既に大分配慮されており,非常に汚いということではありませんが,面会時に小さなお子さんをお連れの方々に,例えば,子供用のソファを用意するとか絵を飾るなど,あまりにも無機質な部屋だとお子さんも心情に良くないということもあり,配慮してもらいたいということです。既に面会室も被収容者が子供を抱っこできるなどの配慮をしていますが,なお一層心情にも配慮して,更にできることはないかということを検討していただきたいということです。
 また,医療面の改善については,昨年,全国の入国管理収容施設における医療費が2億4,000万と前年よりかなり増えており,今後も増える可能性があることから,まずは概算要求で要求していますが,そのことについて財務当局にもしっかりと御理解をいただいて,しっかりと予算を確保していきたいと考えています。

【記者】
 収容の長期化自体に対しては,どのように対処していくのか,批判も出ているところだと思いますが,その点のお考えをお願いします。

【大臣】
 収容の長期化については,まず大前提として国際法上,不法残留者については退去を強制する権限が国の権限としてあるわけです。それについて,今,残念ながら退去を忌避するという方に対し,説得に説得を重ねている状況であり,そうした中で収容が長期化するという部分はあります。その方々を自国に還さないということは,不法残留者を国内に増やすということになり,それが国民の理解を得られるかという問題はあると思います。
 そういった方々に一旦自国に戻ってもらうため,これからもしっかりと説得を重ねていきたいと思いますし,送還についても適切な事案については,しっかりと送還を実施したいと思っています。
  送還に当たって集団で退去させるために,例えば,チャーター便を用いるという方法も行っており,その予算の確保についてもしっかりとやっていきたいと思っています。
 中には退去強制を忌避している人を自国民でも受け取らず,パスポートを発給しない国もあります。それにより送還がなかなか困難だということにもなるので,そういった国に対しては,自国民のためでもあるので,きちんとパスポートを発給してもらい,一旦国に帰ってもらうということを粘り強く外交ルートなどを通じて,訴えていきたいと考えています。

平成30年7月豪雨の被災者に対する法テラスの無料法律相談援助に関する質疑について

【記者】
 平成30年7月豪雨の被災者に対する法テラスの無料法律相談について,援助の内容と利用状況をお聞かせください。

【大臣】
 「平成30年7月豪雨」の被災者に対する法テラスの無料法律相談援助については,私は当時法務大臣政務官でしたが,安倍総理が被災直後の本年7月11日に岡山県の被害状況を視察されたときに私の方から,中部地震や熊本地震などの経験から,被災者の方々の生活再建のために是非とも実施が必要であることを直接総理に直訴した経緯があります。日本弁護士連合会や被災者からも要望が強くありました。そのようなことから,総理による視察の4日後の本年7月14日,「平成30年7月豪雨」を総合法律支援法に基づく大規模災害に指定する政令が公布・施行されました。豪雨災害では初めての適用ということでした。
 内容については,「平成30年7月豪雨」の被災者の方々に対して,豪雨発生日から1年を超えない最長の日である平成31年6月27日までの間,法テラスにおいて無料で法律相談に応じます。通常,法テラスでの法律相談を無料で受けるときには,資力がないことが要件となっているのですが,被災者の方々の場合は家は残っており,資力は一定程度あるけれども被害は甚大といった場合もあるかもしれません。そういった方々に資力を問わず,無料法律相談を各地の弁護士会の御協力も得ながら実施しているところです。
 政令が公布・施行された本年7月14日から,10月5日時点までの速報値で3,000件を超える無料法律相談の御利用があったということで,被災者の方々の生活の再建に相当程度寄与しているのではないかと思っています。今後も是非,御活用いただきたいと思っているところです。

外国人の医療保険利用に関する質疑について

【記者】
 外国人の医療保険利用についてお聞きします。就任に当たって総理大臣からの指示にも含まれていましたが,「正当に加入する資格のない外国人の医療保険利用」が問題視されています。昨日,自民党でもこの問題が話し合われました。法務省として,どのような対策をとっていくお考えか,現状の検討状況をお聞かせください。

【大臣】
 まず大前提の認識として,在留外国人に対する適切な医療の確保は重要であることは当然です。他方で,本来の在留目的を偽って我が国に在留して,保険制度を悪用し,安く医療を受けようという目的で来ている偽装滞在外国人に対しては,厳正に対処する必要があると考えています。
 現状については,昨年12月から,医療を受けることが真の在留目的であるにもかかわらず,在留目的を偽って在留してる疑いのある外国人について,国民健康保険の窓口を有する市町村から地方入国管理局に通知する制度を試行的に運用することを内容とする通知が既に厚生労働省から地方自治体に対して発出されており,本年1月から運用されています。
 これまで複数の市町村から地方入国管理局に対し通知がされていますが,現時点で在留資格の取消しを決定するに至った事案はありません。今後,引き続き市町村から通知を受けた場合には,必要な調査を行った上で,在留資格取消事由に該当すると認められる外国人については,速やかに在留資格を取り消すなど,適切に対応します。そして,今回新たに総理から指示もありましたので,制度を所管する厚生労働省とも緊密に連携して,医療保険制度の適切な運用の確保のために,いかなる方策が執り得るかということをしっかりと検討した上で,対応していきたいと考えています。

松橋事件の再審決定に関する質疑について

【記者】
 松橋事件についてお聞きします。熊本県松橋町で発生した松橋事件で既に服役した宮田浩喜の再審が決定しました。再審を巡っては検察の抗告などで審理の長期化を招いたとの指摘もありますが,宮田さんも高齢で体調も優れないという中での再審となることも踏まえて,元検察官でもある大臣の御所感をお聞かせください。

【大臣】
 御指摘の事件について,10月10日,特別抗告を棄却する決定がなされたことは承知しています。ただ,個別具体的な事件における裁判所の判断ですので,法務大臣として所感を述べることは差し控えさせていただきたいと思います。

靖国神社秋季例大祭に関する質疑について

【記者】
 靖国神社で明日から秋季例大祭が行われます。国会議員の集団参拝なども予定されていますが,現状,大臣は参拝される予定などありますでしょうか。

【大臣】
 これについては,適切に判断したいと思います。

【記者】
 適切にということは,行くか行かないかは今は明言されないということでしょうか。

【大臣】
 これは個人の内心の問題であると思います。ですので個人として適切に判断したいと考えています。

【記者】
 過去に参拝されたことはありますか。

【大臣】
 あります。付言すれば,私は昔,8月15日に靖国神社とアーリントン墓地を同日に行ったことがあります。たまたまその日に海外出張があったので,時差を利用してです。
 

消費税率の引き上げに関する質疑について

【記者】
 安倍総理は15日(月)の臨時閣議で,来年10月1日に消費税率を10パーセントに予定どおり引き上げる方針を示されました。このことについての大臣の御所感をお聞かせください。

【大臣】
 これは既に総理や官房長官,直接の担当大臣が御説明されていることに従うべきものであり,今後も閣議で決定された内閣の方針に従って,適切に対応してまいりたいと考えています。

(以上)