平成30年10月26日(金)

 今朝の閣議では,法務省案件はありませんでした。
 私から2件御報告があります。まず,法務省における障害者雇用の件についてです。
 先日開催された関係閣僚会議においては,総理から,今回の事態を真摯に重く受け止め,組織全体として,「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」に基づき,再発防止や法定雇用率の達成,障害のある方が活躍できる場の拡大に取り組むよう強い御指示がありました。
 こうした御指示を踏まえ,一昨日,私が事務次官等の幹部に対し,今般の事態に対して厳しく注意するとともに,再発防止等に全力で取り組むよう指導しました。法の支配の実現を使命とし,障害を理由とする偏見・差別の解消に向けた人権啓発活動に取り組む法務省のトップとして,今回の事態について改めてお詫び申し上げます。そして,省内一丸となって,基本方針に基づく取組を着実に実施することによって,その責務を果たすよう努めてまいる所存です。
 2点目は,国連難民高等弁務官との面談についてです。昨日,フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官とお会いし,意見交換を行いました。法務省と国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は,難民を保護するという共通の目標のため,これまでに強固な信頼と緊密な関係を築いてまいりました。
 これからも難民高等弁務官のみならず,様々な事務レベルでも,緊密な連携を取って,法務省とUNHCRとの協力関係を発展させていくことを確認しました。

入管法改正案に関する質疑について

【記者】
 外国人材を受け入れる新たな在留資格の創設について,今週から法案審査が本格化しました。自民党法務部会では,様々な団体からヒアリングが行われ,議員の方からは法案に対する慎重意見も多く出ています。これまでの議論について,大臣の御所感をお聞かせください。

【大臣】
 この法案について,各党において様々な御議論をいただいており,様々な御意見を頂いているものと承知をしています。
 今回の新たな外国人材の受入れは,我が国の持続可能な経済・社会の実現に関わる重要な問題であり,本当に深刻な人手不足の状況に対応するため,現行の専門的・技術的分野における外国人材の受入れ制度を拡充し,一定の専門性・技能を有し,即戦力となる外国人材を受け入れようとするものです。
 本制度については,法案でその根幹を規定し,政府全体として閣議決定に基づいて基本方針を策定し,更に分野別の運用方針で肉付けして具体化していくこととなります。
 そうした構造の中で,頂いた御意見については真摯に受け止め,制度の趣旨,あるいは制度の骨格等について真摯に説明する中で,御疑問については一つ一つできる限り丁寧に対応した上で,受入れを予定している業種やその制度内容のより詳細な説明を可能な限り行っていきたいと思っています。本制度の趣旨や内容について広く御理解いただけるよう全力を尽くしてまいりたいと考えています。

【記者】
 自民党法務部会の中でも,なぜ4月なのかという意見がありました。来年4月という目標を掲げた背景ですとか,この時期にやらなければならない理由を改めてお伺いできればと思います。

【大臣】
 アベノミクスの推進により,日本経済が大きく改善する中,成長から分配への経済の好循環が着実に回りつつあると考えています。しかし,有効求人倍率は,44年ぶりの高さで,全都道府県で1を超える状態が続いています。一例を挙げると,介護においては3倍以上,建設業の中では10倍を超えるものがあり,極めて高い数値を示しています。また,失業率は四半世紀ぶりの水準まで低下している状況です。
 一方で,少子・高齢化の影響等により,労働力となり得る生産年齢人口は毎年減少しているということに加えて,高齢化による退職とともに若い世代のそういった分野での就職はかなり減っているという部分があります。そうした動向も踏まえると,将来的な持続可能な社会,経済社会の実現について,やはり深刻な人手不足の懸念が現段階で生じていると考えています。人手不足が成長のボトルネックになっているという御指摘もありますし,直近の試算によると,人手不足に関連する国内企業の倒産すら増加しているという声もあります。
 そうした深刻な人手不足の状況が正に今あるという状況の中で,政府としては,昨年6月の未来投資戦略に基づいて,真に必要な分野に着目しつつ,外国人材の受入れの在り方について,総合的,かつ,具体的な検討を進めてきたところであり,また,本年2月の経済財政諮問会議においても,専門的・技術的な外国人受入れ制度の在り方について御議論をいただきました。
 これを受けて,総理大臣から制度改正の検討を早急に進める御指示もあり,内閣官房や法務省を中心として,2月から5月までの間に,タスクフォースを開催し,関係省庁とともに検討を重ねてきました。そして,本年6月,制度の基本的方向性が「骨太の方針2018」に盛り込まれ,本年7月には外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議が設置され,新たな外国人材の受入れ制度の実施に向けた取組に関する検討の方向性が示されたところです。そして,改正法案の骨子が10月の閣僚会議において了承されたところです。そういった議論を積み重ねた上でこうした改正法案の骨子というものが課せられている状況です。そういう経緯を踏まえて,政府としては喫緊の課題である現下の人手不足に対応するために,新たな外国人の受入制度について,積極的,継続的に検討を重ねてきたところです。
 この状況に迅速に対応する必要性が高い状況であることに鑑み,来年4月1日の施行を目指して,準備を進めているところです。

【記者】
 現在,受入れ対象の業種として,14分野が候補に挙がっていると思いますが,業種ごとの人材不足の状況,人材不足であるということを示す根拠となる指標等があればお示しください。

【大臣】
 受入れ対象分野については,国内の労働市場に悪影響を及ぼさないようにする観点から,人手不足が深刻な業種を対象に,各業種における分野の特性等を勘案しつつ,できる限り客観的な指標により人手不足の状況を確認したいと考えています。そういうデータに近いのは業を所管する省庁ですので,そうした業を所管する省庁や関係省庁,あるいは法務省や厚生労働省等の制度所管省庁の協議によって決定するという枠組みを考えており,いろいろと検討を重ねて,具体的な指標については,受入れ分野の決定プロセスの検討において,協議を踏まえて決定したいと考えています。
 現段階で有効求人倍率を始めとする,各分野における様々な公的統計がどのような有用性,あるいは将来に対する予測可能性があるかということも踏まえて,さらには業界団体を通じた所属企業への調査等も含めて,今後,決定していきたいと考えています。

【記者】
 受入れ対象となる業種ごとの受入れ見込み人数というのをどのように考えているのか,また,「特定技能1号」,「特定技能2号」,それから全体の規模感,さらに,今後の受入れの推移についてどのように捉えているのか教えてください。

【大臣】
 現段階で法務省に対して,「介護」,「農業」,「建設」,「造船」,「宿泊」などを含む14業種について,希望が示されており,人手不足が深刻な産業上の分野というのはどういうものなのかということも含め,現在,関係省庁とともに検討を行っています。
 また,現在各省庁においてその見込み数について精査しており,法務省としては,全体的な制度設計としてどのような枠組み,在留資格とするのかという骨格を制度所管官庁として所管しているわけですが,そういった中で,例えば,閣議決定や分野別方針というところで肉付けしていく中で,そういった受入れ見込み数について,今,情報共有,精査をしています。
 今後,しかるべき時期に取りまとめて,見込み数をお示しできるようにしていきたいと思います。
 
【記者】
 「しかるべき時期に」というのは,国会で審議がされている間にも示す見通しなのか,それとも法案が成立した後に示す予定なのでしょうか。

【大臣】
 現在,受入れ見込み数を各省庁において精査しており,また,現時点においては与党における法案審査を終えていない状況で,具体的な時期については,お答えは差し控えさせていただきたいと思います。いずれにせよ,今回の新たな外国人材雄受入れについて国民の皆様に御理解いただけるようなっ時期にお示ししたいと考えています。

【記者】
  この法案は移民政策への転換ではないかといった指摘があると思いますが,改めてその点をお聞かせください。

【大臣】
 「移民」という言葉は様々なところで様々な文脈で用いられているものですが,我が国は,入国当初から何らの活動を前提とせずに期限を設けることなく外国人の在留を許可するという方針は採っておらず,今回の新たな制度においても,この点はいささかも変更はありません。
 今回の受入れ制度は,深刻な人手不足の状況に対応するため,真に必要な分野に限り,一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れるものです。
 具体的には,「特定技能1号」については,受け入れる外国人の在留期間は通算5年とする,「特定技能2号」についても,現行の専門的・技術的分野における在留資格と同様,一定の期間を設けて在留を許可するものです。もちろん更新は可能ですが,更新の都度,しっかりと在留が認められるかどうかということを審査していくことになります。いずれも期間を設けることなく外国人の受入れを認めるものではありません。
 また,「特定技能1号」及び「特定技能2号」のいずれについても,その活動内容が真に人手不足であると認められる分野における就労活動に制限されており,就労の活動について制限がない永住資格とは異なります。
 このように,今回の新たな制度は入国当初から,何らの活動を前提とせずに期限を求めることなく在留を許可する,というような受入れとは違うということは,これからもしっかりと説明していきたいと思います。

「組織罰を実現する会」との面談に関する質疑について

【記者】
 先ほど大臣は「組織罰を実現する会」と面談をされたかと思いますが,それについての受け止めをお願いいたします。

【大臣】
 先ほど,記者会見の直前に「組織罰を実現する会」の方々と面会し,直接,お話を伺い,一万人を超える署名とともに御要望を受け取ったところです。笹子トンネル事故において,亡くなられた方々の御冥福をお祈りするとともに,御遺族の方々に改めて心からお悔やみを申し上げたいと思います。
 御要望が本当に切実なものであることについて,重く受け止めさせていただきました。頂いた請願については,限られた時間であったということもあり,まずはしっかりと読ませていただきたいと思います。
 一般法である刑法に規定されている罪,例えば業務上過失致死罪について,両罰規定を設ける法制度とすることについては,これまでの法体系の整合性や実務上の民事と刑事の問題,あるいはこうした公共交通における大規模な事故をどのように防止するかという観点など含めて,理論面・実務面で様々な課題があるということは法律家として言わざるを得ない部分はあります。
 こういった公共交通に関わる悲惨な事故への厳正な対処は必要ですが,どのような対処をすべきかということについて,関係省庁とも共有する必要があると思います。法務省としては,まずは刑罰に関することということで,刑罰担当の刑事局において会の皆様からお話を伺っていますので,そこでお話しいただいたことも含め,受け止めさせていただきたいと考えています。
 

国連難民高等弁務官との面談に関する質疑について

【記者】
 国連難民高等弁務官との面会では,日本政府に対してどのような要請があったのでしょうか。日本は今のところ難民認定,人道的配慮を含め,現在,難民申請者が2万人近い中で,1パーセントに満たない人しか認められていません。そもそも認定もそうですし,あるいは難民申請してから日本に在留して,20年,30年経ってもいまだに在留資格が認められないこともあります。ですから,法務省入国管理局で難民業務をやること自体が無理なのではないかという声も以前から上がっていますが,今回の入管局の改編と難民業務の在り方について,どのように今後取り組んでいかれるのか,あるいは法務省では無理だから別のところで難民認定機関を作ってくれといった話にまで発展するのかどうか,国連難民高等弁務官との話も含めてお伺います。

【大臣】
 まず,グランディ国連難民高等弁務官との面談では,第三国定住による難民の受入れ対象及び受入れ人数の拡大等について,議論に積極的に参加するということを御紹介し,謝辞を頂きました。
 我が国はUNHCRとの協力により,2010年からアジアで初めて,第三国定住による難民の受入れを行っています。そして,内閣官房の下で法務省を含む関係省庁で検討会の設置が決定され,今後,受入れ対象拡大の要否,あるいは拡大する場合の範囲について話し合っていくことについてグランディ国連難民高等弁務官から謝辞(appreciate)を頂きました。その他,様々な意見交換をさせていただいたところです。
 難民認定については,条約に基づいて,条約の趣旨を踏まえ,適切に対応していくものと承知をしています。
 「出入国在留管理庁」の下で将来的な難民認定制度のことについてどうするかということについては,様々な外国人の出入国及び在留をめぐる状況をしっかり説明し,法案に御理解を頂く中で,しっかりと取り組んでまいりたいと考えています。他方で外国人との共生も大事ですので,そうしたことも閣僚会議や共生社会の外国人の方ともするということが,恐らく日本社会における外国人の受入れの考えになっていくものと思います。そうしたことも進めていきたいと考えています。

(以上)