平成30年10月23日(火)

 今朝の閣議では,法務省案件はありませんでした。続いて私から障害者雇用関係で御報告します。本年8月以降,政府では,国の行政機関における障害者雇用の対象障害者の不適切計上についての検証とともに,障害者雇用の促進に向けた検討を行ってまいりました。そして,昨日,検証委員会による検証結果が関係府省連絡会議に報告された上,公表されたと承知しています。
 検証結果において,法務省を含む多くの行政機関について,障害者計上方法の正しい理解の欠如等の問題点が指摘されました。この検証結果を真摯に受け止め,深くお詫び申し上げます。
 また,本日開催された関係閣僚会議で策定された基本方針に基づき,政府一体として,再発防止はもとより,法定雇用率の達成に向けた計画的な取組や,障害のある方の活躍の場の拡大に向けた取組などを進めることとなりました。その際,総理からは,各大臣は今回の事態を深く反省し,真摯に重く受け止め,組織全体として本日策定された基本方針に基づき,再発防止にしっかりと取り組むよう,強い御指示があったところです。
 法務省としては,平成31年末までに障害のある方約630人を採用する計画を策定しており,法定雇用率の速やかな達成に努めることとしています。あわせて,障害のある方の活躍できる職域を拡充し,そのための環境整備を行うなどして,障害のある方がいきいきと働くことができる環境作りを進めてまいります。
 法の支配の実現を使命とし,また,障害を理由とする偏見・差別の解消に向けた人権啓発活動に取り組む法務省のトップとして,基本方針に基づく取組を着実に実施することによって,その責務を果たすよう努めてまいる所存です。

障害者雇用に関する質疑について

【記者】
 障害者雇用水増し問題に関連してお尋ねします。障害者雇用の推進のため,法務省では今後,どのような取組を行っていくか,教えてください。

【大臣】
 まず基本方針については,本日の関係閣僚会議で「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」が策定され,政府一体として,再発防止はもとより,単に法定雇用率の達成にとどまらず,障害のある方が意欲と能力を発揮し,活躍できる場の拡大に取り組んでいくことを目指して,障害者の雇用を不断に推進していくこととされたところです。
 法務省の取組方針ですが,障害者の雇用の安定を図り,真の意味で障害者の雇用促進を図るためには,こうした考え方を踏まえた上で,省全体として,基本方針で示されている様々な取組を着実に実施していくことが重要と考えています。
 具体的には,法務省独自の取組として設置した「法務省障害者雇用推進プロジェクトチーム」の下,再発防止や法定雇用率の達成に向けて取り組むことはもちろん,障害のある方の活躍できる職域を拡充し,そのための環境整備を行うなどして,障害のある方がいきいきと働くことができる環境作りに取り組んでいく所存です。

【記者】
 障害者雇用の問題ですが,先ほど言われた対策は今までやってきてしかるべき内容と思うのですが,なぜ今までできなかったのか,法務省は官庁の中でも3番目に人数が多いのですが,どこに原因があると大臣はお考えですか。

【大臣】
 検証委員会でも,対象障害者の計上方法についての正しい理解の欠如,対象障害者のずさんな計上,障害者雇用促進法の理念に対する意識の低さなどが指摘されており,法務省としても,こうした指摘は重く受け止めなければならないと思っています。
 今後は,本日策定された基本方針に沿って,再発防止に取り組むことはもとより,省全体として障害のある方の意欲ある活躍の場を御提供する,雇用を促進する,という意識を徹底して取組を強化してまいりたいと改めて思っています。

【記者】
 障害者雇用について,法務省全体としての数字は示されていますが,その内数として,検察庁における数字は示されていません。検察の仕事に関わる方は,正に社会正義の最前線にいらっしゃる方で,こういう組織の数字も内数として示すべきではないかという声もあると思いますが,大臣は検察庁における障害者雇用の適正な雇用状況の数字をお示しになる考えはありますか。

【大臣】
 まずは検証委員会の検証結果を真摯に受け止め,そして基本方針に従ってしっかりと対応していきたいと思います。その上で,個別の組織ごとの数字の在り方については御指摘も踏まえ,対応・検討させていただきたいと思います。

入管法改正案に関する質疑について

【記者】
 昨日,自民党の法務部会が開かれ,入管法の改正案について議論が始まりました。出席した議員から慎重な意見も複数あったと聞いていますが,改めて入管法改正に関して大臣の御所感をお聞かせください。

【大臣】
 昨日の法務部会では冒頭私も出席し,御挨拶申し上げました。様々な御意見を頂いたものと承知しています。
 こうした御意見を踏まえつつ,新たな外国人材の受入れ制度について,まずは,本制度の趣旨や内容について,広く御理解いただけるよう全力を尽くしてまいりたいと思います。その上で様々な御意見についても改めて承りたいと思っています。
 

【記者】
 この部会は週内にも法案審査して了承を取り付けたいという段取りで進んでいると思うのですが,広く御理解いただきたいということをまず大事にしたいという大臣の御発言からすると,必ずしも週内にも部会了承というスケジュールにこだわらないということでしょうか,大臣としてのお考えをお聞かせください。

【大臣】
 部会の進め方については,党にお任せしているところであり,我々は党の御要望に基づいてしっかりと対応する,それに尽きると思います。

【記者】
 外国人材の受入拡大に関して,受入分野拡大の要件となる「生産性の向上」及び「国内人材確保」について,各業界団体や企業にどのレベルのものを求めていくのでしょうか。あるいは各省庁からどういうものを要請しているという話をお聞きしているのでしょうか。今のところ国民に見えていないというところが不安を抱えている部分であり,「生産性の向上をやってください。」と言われれば当然「やってます。」ということだと思うのですが,基本的に,ここまで外国人材を入れなければならないと認めることになると,例えばAIを導入したらこの業種が必要なくなるとか,コンビニ業界を例に挙げると,無人レジの導入といった生産性の向上をやっていないのに,外国人材を入れてくださいと求めているとなると,国民からするとなかなか理解できないと思うのですが,この辺についてはどこまで求めているのでしょうか。

【大臣】
 まず業所管庁において,「生産性向上はここまでやっています」あるいは「国内人材の活躍についてはここまでやっています」ということをそれぞれ示していただきたいと思っています。今後,業所管庁と緊密なやりとりをしながら,そうした検討をしてまいりたいと思いますが,一方で深刻な人手不足もあります。生産性向上のためのIoTの活用とか,あるいはシニアの皆様や女性の活躍等の指標もある中で,そうしたことをしっかりと踏まえながら国民の皆様に広く御理解いただけるように,しっかりと我々も努力していきたいと思いますし,その材料を業所管庁からしっかりと受けたいと考えています。

【記者】
 報道によると,現在,対象分野が十数分野,社によっては14分野と書かれていますが,これは,今後増えることもあるのでしょうか,あるいは今後この十数の中から厳選されていくという理解なのでしょうか。現在のところ,官房長官の会見などでは,各省を通じて希望が示されているという形になっていますけれども,各業界団体が希望してきているという意味で十数分野なのか,あるいは先ほどおっしゃった生産性向上といった取組を考慮した上での十数分野なのか,その点はどうなのでしょうか。

【大臣】
 分野別の生産性であるとか,人材活用についてはそれぞれ業所管庁から伺うというのが大前提です。その大きな枠組みの中で14業種というのがあるわけですが,それについては,「現在,受入れを希望する意向が示されている」ということです。今,正に法律案を認めていただくために懸命にやっており,そうしたことを踏まえて今後,業種などについて決めていくことになりますが,現段階ではそういった14業種について受入れを希望する意向が示されているということです。

【記者】
 業界団体からということですか。

【大臣】
 業所管庁からです。

【記者】
 そこはどの程度フィルタリングが掛かったものだと認識していますか。

【大臣】
 それは各業所管庁において,それぞれ検討のレベルなどが異なりますので,そうしたことも精査しながら進めていきたいと思っています。

難民受入れに関する質疑について

【記者】
 一部報道で難民の受入れの拡大を検討しているという話が出ています。現状の年30名程度となっているのを倍増させるほか,ミャンマー難民など対象国の拡大も検討していて,24日から来日する国連難民高等弁務官にお伝えするとのことですが,事実関係についてお教えください。

【大臣】
 第三国定住事業に関する御指摘の報道は承知しています。現状について御説明しますと,我が国はUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)との協力により,平成22年度から第三国定住による難民の受入れをアジアで初めて実施しました。当初5年間は,パイロットケースとして,タイ国内に一時滞在しているミャンマー難民を受け入れました。そして平成27年度から,本格実施を開始し,マレーシア国内に一時滞在しているミャンマー難民を年1回,30人受け入れてきたところです。平成30年9月末現在で44家族,174人を受け入れています。
 平成27年度の本格実施から難民を取り巻く国際情勢は大きく変化しています。この第三国定住事業の受入れ対象及び受入れ人数の拡大等を議論するために,今月22日の難民対策連絡調整会議において,「第三国定住による難民受入れ事業の拡大等に係る検討会」の設置が決定されたところです。この検討会において有識者等の意見を聴取し,関係省庁及び有識者で議論の上,受入れ対象の拡大の要否,拡大する場合の範囲について検討を行う予定であると承知しています。

【記者】
 法務省の入国管理局が出入国在留管理庁へ改編することに当たって,難民申請や不服審査に当たる部局を出入国管理の部分とは切り離して,独立した専門機関にすべきであるという要請書が10月10日付けで全国難民弁護団連絡会議から大臣のところへも出されています。第三国定住ということも国際社会から要請としてあると思うのですが,今まで日本の難民認定は極めて少ないと国際社会からも指摘されています。大臣は今回の入国管理局の改編と今後の難民保護行政の在り方についてどのような考えをお持ちなのかお聞かせください。

【大臣】
 難民については,難民条約と国際的な取決めに従って,受け入れるべき者は受け入れ,就業目的など濫用的なものについては,しっかりと審査をしなければならないということです。そのための体制あるいは仕組みを確立していくことで,保護すべき難民はしっかりと保護していきたいと考えています。

【記者】
 今,就業目的と言われましたが,就業を望まない難民申請者はおらず,その国で生活できるから難民申請するわけです。難民申請の濫用という言葉も法務省が乱発していますが,難民認定制度というのを独立した取組,専門的な取組とすべきだという要望書が出されていますが,大臣は,まずこの要望書のことを御存知かどうかということと,今までもこういうことは再三言われたわけですが,今の日本の難民認定の在り方について,どのように考えていらっしゃるか,国際社会に通用するお考えをお聞かせください。

【大臣】
 10月10日付けで全国難民弁護団連絡会議から要請書が提出されたとのことですが,私の手元には届いていません。
現状認識においては,難民認定の難民というのが国際条約上の難民の定義に当たるのかどうかというところから法規上は考えていかなければならない部分があります。ただ我が国はその他の庇護を必要とする者も併せて在留を認めているところです。このような状況の中で法務省においては,申請者が難民条約上の難民に該当するか否かについて,個別に審査の上,難民と認定すべき者を適正に認定していきたいと考えていますし,条約上の難民と認定できない場合であっても,本国情勢などを踏まえ,人道上の配慮が必要と求められる場合には,我が国の在留を認めているところです。
 平成29年に難民認定手続によって庇護した者の合計は,65人です。その内訳は,難民と認定した者が20人,人道上の配慮により在留を認めたのが45人です。平成28年は,難民として認定した者が28人,その他庇護は97人に上っています。法務省としては従来より難民条約上の難民性への判断や,人道配慮による在留の判断を適正に行っており,引き続き真に庇護を求める者の迅速かつ確実な方法を図ってまいりたいと考えています。

人権擁護に関する質疑について

【記者】
 昨日,人権擁護委員会の表彰式があり,大臣も出席されたと思いますが,今年,世界人権宣言から70年,人権擁護委員制度も70年ということで,法務省もアピールされています。ただ,日本にはいわゆる国内人権機関ですとか,国連の諸条約の個人通報制度を批准していないということで,国連からも再三にわたって指摘されています。なぜ自公政権では国内人権機関ですとか個人通報制度の話が出てこないのか,大臣はどのようにお考えでしょうか。

【大臣】
 自公政権に限らず,これまでの間ということで御説明しますと,人権諸条約により設置された委員会から国内人権機構の設立や個人通報制度の受入れに関する勧告が出されたことは承知しています。
 国内人権機構の設置を含めた人権救済制度の在り方については,これまでなされてきた議論の状況も踏まえ,検討しているところです。法務省としては,差別や虐待のない社会の実現を目指し,個別法によるきめ細やかな人権救済を推進するため,引き続き人権啓発,調査救済活動等に丁寧かつ粘り強く取り組んでまいりたいと考えています。
 また,個人通報制度の受入れですが,個人通報制度というのは条約,あるいは条約の議定書という外交関係に関わることですが,条約の実施の効果的な担保を図るという趣旨で注目すべき制度です。他方,通報事案への具体的対応策の在り方を含め,条約等の締結を所掌する外務省において,所要の検討が行われているものと承知しています。法務省としては,外務省の検討に必要な協力を引き続き行ってまいりたいと考えています。

(以上)