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冒頭発言

【河野外務大臣】本日の記者会見にお集まりいただき感謝。現下の国際経済情勢にかんがみ,アジア太平洋の主要な国・地域が一堂に会し,域内の貿易・投資の自由化について意見交換を行うAPEC閣僚会合の意義はかつてなく大きい。
 APEC閣僚会合で,私(本大臣)は,貿易・投資の自由化と連結性の強化によって繁栄するアジア太平洋地域は,日本が目指す自由で開かれたインド太平洋ビジョンの核であることを強調した。日本は,貿易と投資に関する高いレベルの新たな国際基準を設定し,自由貿易体制を広めていく決意である。
 域内の貿易,投資の自由化を引き続き進めるべきであり,APECがその推進の後押しとなるべきという点で,本日,各国の見解が概ね一致することができたことを評価したい。今次会合の大変有意義な成果と言える。
 将来的なFTAAPの実現に向けた道筋であるTPP及びRCEPの進捗についても私は会議で言及した。TPP11は,21世紀型の貿易・投資ルールの基礎となり得るものであり,TPP11の年末発効が確定したことは,自由貿易体制の維持・強化において重要な成果である。
 RCEP協定についても,包括的で,バランスのとれた,質の高いRCEP協定の早期妥結を目指し,引き続き精力的に交渉を進めていきたい。
貿易・投資の自由化推進に向けた努力はアジア太平洋地域に留まらない。日・EU EPAの規模と範囲は,世界史に特筆されるものであり,現在,同協定の早期発効に向けて懸命に取り組んでいる。
 こうしたメガ協定に加え,フェロー諸島のような小規模経済とのFTAも含め,その他FTA交渉も着実に進めていく考え。
 また,今次APEC閣僚会合では,包摂的な成長実現のため,女性の経済的参画,防災について議論するとともに,地球規模課題への対応に必要な資金を確保するため,革新的資金調達の重要性を訴えた。
 世界の難民・国内避難民の数は約7,000万人に達しており,支援を待つこれらの数としては,第二次大戦以降最も高い水準に達している。これに加え,気候変動の結果として21世紀末までに猛烈なハリケーンや台風の発生頻度が増加し続けるという予測もある。このような中,包摂的な成長を実現する上での課題克服のため,資金を動員する必要性はこれまでになく高まっている。
国際社会は2030年までのSDGs達成に必要な年間2.5兆ドルもの資金ギャップを埋める方法を真剣に検討する必要がある。政府開発援助(ODA)や官民連携(PPP)のみで埋めることは簡単ではない。
 経済のグローバル化から受益している国境を越える活動に広く薄く課税し,難民,国内避難民や大規模な自然災害に苦しむ人々への支援といった人道支援に充てる国際連帯税は,長期的な解決策の一つ。
 日本は,こうした解決策に関する国際社会の議論に貢献する用意がある。今回,APEC参加閣僚との間でもそうした議論を行ったところであり,私の国際連帯税についての提案は,会合に参加した閣僚達から肯定的な反応を得た。
 今次閣僚会合では様々な成果があった。会合に参加した各閣僚に謝意を表する。

質疑応答

【ブルームバーグニュース】北朝鮮に関して,日本はすでに北朝鮮と会談を行っているか。また,金正恩との首脳会談に関し我々に共有できる情報はあるか。

【河野外務大臣】我々は北朝鮮政府関係者と様々な会談を行っている。私自身もニューヨークで開かれた国連総会の場で北朝鮮の外相と会談した。その他,北京の大使館ルートを通じ連絡をとっている。安倍首相と金委員長の首脳会談については何ら決まっていないが,可能性は広くあると言える。北朝鮮が積極的に既存の諸懸案の解決に取り組むのであれば,我々も喜んで日朝国交正常化に取り組む用意がある。

【新華社通信】包摂的成長と経済についてお伺いする。貴大臣は先ほど革新的資金調達ということにも言及されたが,日本は中国が進める地域の連結性を高めるキャパビル計画に協力するか。

【河野外務大臣】日本は,中国が進めるインフラ計画が開放性,透明性,ライフサイクルからみた経済性,対象国の財政の健全性が国際基準に見合うものであれば,喜んで中国に協力する。包摂性について言えば,我々はSDGsの達成を目指しており,できる限りのことを行うつもりだ。しかし一方で,国際社会は,現在存在する巨額な資金ギャップを埋める方法を真剣に検討する必要がある。

【英国プレス】今回のAPECに際し,ポンペオ国務長官やライトハイザー通商代表が米国代表団に含まれていないと伺った。また,トランプ大統領も訪問を予定していない。貴大臣は,米国のAPECや同地域への関心が薄れているとお考えになるか。

【河野外務大臣】ペンス副大統領は今週頭に訪日し,その際我々は有意義な議論を行った。また同副大統領は続けて米国代表としてシンガポール(ASEAN)を訪問し,さらにAPEC首脳会合にも参加予定だ。よって,APEC会合参加者は,米国の存在を十分に感じるだろう。

【英国プレス】WTO改革に関して今日,どのような議論がされたか。

【河野外務大臣】今回会議に出席した閣僚たちは皆,WTOが重要であり国際貿易体制の中枢であるべきという意見で一致したと考える。一方で,電子商取引やデジタル・エコノミー等に関するルール作りを行うことでWTOを近代化し,強化しなければならない。WTOがこのルール作りの中心となるべきという点について,概ね合意したと考える。

【上海デイリー】明日,習近平国家主席が島嶼国のリーダー達と夕食を共にする予定だ。習国家主席は,夕食会でスピーチを行う予定であるが,これに対して何かコメントはあるか。また,日本と中国は第三国の経済発展のために協力するのか。

【河野外務大臣】日本と中国が太平洋島嶼国を含めた第三国経済のために協力するという考えについて,歓迎する。すでに述べたように,もし中国のプロジェクトが国際基準を満たすものであるならば,我々は喜んで中国と協力するだろう。世界第二と第三の経済大国として,我々は協力して国際問題の解決に取り組む必要があり,同協力は良い機会となる。安倍首相が北京を訪問した際,私も同行したが,両国の首脳は非常に有意義な議論を行った。両国が協力する機会は多いにあり,また私はそれを楽しみにしている。

【BBC】貴大臣は気候変動に関する発言で国際社会は協力すべきと述べられた。今回,PNGはAPEC会合を主催しているが,貴大臣は,国際社会が(資金)ギャップを埋めるために協力できるとお考えか。

【河野外務大臣】もし,私たちが真剣にSDGsの達成に向け取り組むならば,資金ギャップの問題について解決する必要がある。私が提案したのは,国際連帯税についてである。たとえば,為替取引に薄く課税し,それらの税が国際機関に直接届くようにする。そして,国際機関はその資金を難民や自然災害の被災者のために利用する。これは,一つの提案であり,他にも多くの提案があるだろう。重要なことは,資金ギャップについて認識することである。日本は財政赤字を抱えており,他の多くの支援国も資金上の制約を抱えている。そのため,この資金ギャップを各政府からの拠出で埋めることは非常に難しい。我々は問題解決のためにクリエイティブにならなければならない。私の提案は多くの提案の中の一つであり,今後議論が進むことを歓迎する。また,すべての国がこの議論に加わるべきであると考える。

【NBC TV】今次APEC会合で達成したい成果は何か?

【河野外務大臣】今次会合は,経済問題について地域のリーダーと共に協議する非常に良いフォーラムである。現在自由貿易体制が挑戦を受けていることは明白である。本日の閣僚会合同様,首脳会合でも同問題の議論が引き継がれ,同地域が必要とする貿易の自由化と投資体制について広くコンセンサスに達することを期待する。そのようなコンセンサスは地域外の人々に対しても自信を与える。よって,リーダー達が建設的な議論を行うことを期待する。今回,私の初めてのパプアニューギニア訪問となったが,現地の皆さんの温かい歓迎に感謝する。