平成30年10月5日(金)

 今朝の閣議では,法務省案件はありませんでした。
 続いて私から3件報告があります。まず,副大臣,政務官についてですが,皆さんも御承知のとおり,昨日,平口洋法務副大臣,門山宏哲法務大臣政務官が就任しました。
 平口副大臣は,昭和47年に建設省に入省され,以来,長きにわたり国土交通省等において行政の第一線で御活躍されたことに加え,秋田県警本部長を務められるなど,多様で豊富な行政官としての御経験をお持ちです。
 政治家としても,平成25年9月から約1年間,谷垣禎一法務大臣の下,法務大臣政務官を務められ,その際には,高度外国人材の受入れの促進等を内容とする出入国管理及び難民認定法の改正に携わるなど,現下の法務行政の最重要課題の一つである出入国管理行政にも御造詣が深い方です。
 また,御承知のとおり,平成29年11月からは,衆議院法務委員会委員長を務められ,的確な委員会運営により,第196回通常国会においては,成年年齢の引下げ等の重要な政府提出6法案の全てを無事に成立させるなど,本当に卓越した手腕を示されています。
門山政務官は,25年にわたり弁護士として御活躍されてこられました。その間,家事調停委員をお務めになるなど,法曹実務家として豊富な実務経験をお持ちです。
 また,千葉青年会議所の理事長を務められるなど,法曹に限られない様々な御見識を有しておられ,ライフワークが「社会正義の実現」ということで,正に法務省に期待されている,社会的弱者の救済活動にも御尽力されてこられました。
 政治家としても,自由民主党の法務部会副部会長を経験されるなど,よりよい法務行政の推進にも力を尽くしてこられましたところです。
 このように,幅広い行政経験を有し,また,法務行政の抱える諸課題を十分御理解いただいている平口副大臣と,法曹実務家としての様々な御経験を有し,司法・法務行政に精通する門山政務官を,法務省にお迎えすることができたことは誠に心強い限りです。
 平口副大臣と門山政務官には,お持ちの御経験や御見識を存分に発揮していただくとともに,上川陽子前法務大臣から受け取ったボールを胸に,平口副大臣,門山政務官のお力を得ながら,オール法務省で,正に『全員野球』で法務行政を取り巻く諸課題に全力で取り組んでまいる所存ですので,よろしくお願いします。
 次に,法の日フェスタ関係を広報させていただきます。明日,10月6日(土),法務省において,第59回「法の日」週間記念行事として「法の日フェスタ in 赤れんが」と題し,国民の皆様に,法の役割や重要性について考えていただいたり,法務行政を身近に感じていただくためのイベントを開催します。
 具体的には,少年院の教育プログラム体験や,「法の日」にちなんだ落語会といった例年実施しているプログラムのほか,「再犯防止」や「立ち直り」をテーマとした,よしもと興業の芸人さんによる,笑って学べるイベントや,2022年4月に成年年齢が引き下げられることを踏まえた,10代20代の参加者による公開トークセッションなど,様々な企画を予定しています。
 また,今年は,明治150年記念特別企画として,国の重要文化財である法務省の赤れんが棟の見学ツアーや「明治期における法典・司法の近代化」をテーマとした記念講演,最近頻発している法務省を騙った架空請求詐欺を題材にした検事による模擬取調べなども予定しています。
 また,模擬裁判も予定しており,私自身も,昔取った杵柄ということで,検事役として若干参加することを考えています。
 是非,多くの皆様に「法の日フェスタ」に御来場いただいて,法というもの,そして法務省というものを身近に感じていただきたいと思っていますので,報道機関の皆様にもこのイベントについて取り上げていただきますよう,よろしくお願い申し上げます。
 最後に,AALCO(アールコ)についてです。「アジア・アフリカ法律諮問委員会(Asian-African Legal Consultative Organization)」略してAALCOの年次総会が,来週8日から12日までの間,東京で開催されます。これは,国際法に関するアジア・アフリカ地域唯一の政府間の会議ですが,私も,ホスト国の法務省を代表し,開会セッションにおいて,英語で挨拶をさせていただく予定です。
 AALCOには,アジア,アフリカから47の国と地域が加盟しており,毎年1回,加盟国の外務大臣や法務大臣等が集い,海洋法や国際貿易・投資法などについて議論が行われます。今回,24年ぶりに年次総会が日本で開催されます。
 私の挨拶では,国内外における「法の支配」や「法遵守の文化」の重要性,そのような普遍的な価値を世界に広める「司法外交」を法務省が積極的に展開していることをアピールしていきたいと思います。河野外務大臣も開会挨拶をされる御予定です。
 我が国は,これまでアジア諸国に対する法制度整備支援や世界各国の刑事司法実務家を対象とした研修を実施するなど,法の支配の浸透に向けた本当に地道な,しかしながら非常に価値のある,そして評価の高い取組を続けてまいりました。こうしたソフトパワーとしての「司法外交」を今後も積極的に展開していきたいと考えています。
 

大臣就任の意気込みと重点課題に関する質疑について

【記者】
 2日の組閣では,唯一石破派からの起用,さらに当選3回での大抜擢ということで,法務大臣就任後,大きな注目を集めていると思いますが,改めて,意気込みと,今後,重点的に取り組みたい課題について教えてください。

【大臣】
 身に余る重責を担わせていただき,本当に身の引き締まる思いです。総理は適材適所と申しましたが,その適材であると認めていただけるように,日々精進していきたいと思っていますが,まず,全体的な課題については,法務省は,国民に最も身近な民法や刑法を始め,各法令の基礎となる基本法制の維持及び整備,法秩序の維持,国民の権利擁護などを任務としています。
 これらは,いずれも,国民生活の安心・安全を守るための基盤となるものであり,我が国にとって極めて大切な任務であると考えています。これは本当に,繰り返し申し上げたい基本線となります。
 そして,先日も申し上げたとおり,今般,法務行政の課題について,総理からは,6点,すなわち,司法制度改革の推進,きめ細やかな人権救済の推進,「世界一安全な国,日本」をつくるため,社会を明るくするための施策の総合的な推進,我が国の領土・領海・領空の警戒警備について,情報収集及び事態に応じた我が国の法令に基づく適切な対処,新たな在留資格の創設及び組織体制の強化と在留管理の徹底,外国人による医療保険の利用について,適正な運用の確保について,御指示を受けたところです。これらは,いずれも,国民生活にとって大変重要な課題であると認識しています。
 法務省を取り巻く諸課題としては,若干総理からの御指示と重複する部分もありますが,先ほど申し上げた「世界一安全な国,日本」の実現に向けた犯罪対策・テロ対策の推進,2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会及び観光立国を念頭においた適正な出入国管理の実現,新たな外国人材の受入れ及び我が国で生活する外国人との共生社会の実現,先ほど申し上げた司法制度改革の推進,あるいは持続可能な経済成長を支援するための法整備等,予防司法機能を始めとする訟務機能の充実・強化,東日本大震災等の自然災害からの復興支援など,多岐にわたっています。
 今申し上げた課題のうち,例えば,「世界一安全な国,日本」の実現に関しては,昨年12月,政府として初となる再犯防止推進計画が閣議決定され,5つの基本方針の下,7つの重点課題について115の施策が盛り込まれました。
今年は,再犯防止推進計画に基づいた「再犯防止推進元年」であり,極めて重要な1年です。
 この元となった再犯防止推進法については,私自身も議員立法として携わった経験があります。そうした経験も踏まえつつ,新たな被害者を生まない,安全・安心な社会を実現するため,国・地方公共団体・民間協力者等が一体となって,その1つ1つの施策を着実に実施して,「世界一安全な国,日本」を実現したいと思います。
 また,犯罪被害者支援の充実・強化は政府として取り組むべき重要課題の1つです。
 私自身も,ストーカー規制法の改正や,リベンジポルノ対策法,あるいは,国外犯罪被害者の遺族に対する弔慰金の支給に関する法律といった議員立法にも携わってきました。犯罪被害者支援に積極的に取り組んできたところです。
 犯罪被害者,特に性犯罪被害者であるとか,虐待などについてその他に対しては非常に深刻な問題がありますので,そうした被害者の御家族・御遺族の声に真摯に耳を傾け,どのようなことができるかを関係省庁とも考え,取り組んでいく,そうした法務行政を心掛けてまいりたいと考えています。
 さらに,今般,総理から「閣僚全員が復興大臣である」という意識を共有し,被災者の心に寄り添い,被災地再生のため全力を尽くすよう,御指示がありました。
 最近も,平成30年7月豪雨,あるいは,北海道胆振東部地震等,また,今日も地震があったようですが,大規模な自然災害が相次いでいます。私は,こういった災害に関しては,原発損害賠償時効延長法の成立など,被災者支援に取り組んできた経験があります。
 また,今般,法テラスにおける情報提供や東日本大震災や特定非常災害に指定された平成30年7月豪雨の被災者の皆様に対する無料法律相談の活用などを法務省も積極的に実施しているところです。これは弁護士会の協力を得ているところですが,法務省としても被災者に寄り添った支援の実施をしっかりとやっていきたいと思います。
 そして,例えば,持続可能な経済成長を支援するための法整備として最近注目されているのが,所有者不明土地問題です。私自身は,空家等対策の推進に関する特別措置法の成立にも携わりましたし,また,自由民主党の「所有者不明土地等に関する特命委員会」の事務局長として,骨太の方針にこれを盛り込むべく尽力しました。こうした経済成長につながるような諸施策についても,法務省として,しっかりと取り組んでいきたいと思います。
 まだまだ言いたいことはありますが,これまでも法務大臣政務官として,上川陽子前法務大臣,そして葉梨前副大臣の下,これらを含む諸課題にしっかりと取り組んでまいりました。今後は,法務大臣として,平口副大臣,門山政務官,そして法務省5万3,000人の職員と心を一つにし,関係各省と連携しながら,その職責を果たしてまいりたいと考えています。
 1つ1つの課題というのは非常に大きく,そして,今まで長期間変わっていないものに関しては変わっていない理由があります。それらに対して正面から取り組み,国民に寄り添った,そして国民目線でわかりやすい国民の胸にすとんと落ちる法務行政の実現に努めてまいりたいという思いです。

AI技術活用等検討PTに関する質疑について

【記者】
 法務省においてAIの活用等を検討するプロジェクトチームが立ち上がったようですが,その概要を教えてください。

【大臣】
 AIについては昨今,様々な活用が議論されています。「世界で最もイノベーションに適した国」に日本がなるために,その実現に向け,本年6月15日に閣議決定された「統合イノベーション戦略」において,AI(人工知能技術)が特に取組を強化すべき主要分野に掲げられています。このようにAI技術の活用,推進は政府全体として取り組むべき重要課題の一つであり,法務省においても,どのような分野にAI技術を取り入れることができるのかなど,法務行政におけるAI技術の活用等を検討するために,本年10月1日,大臣官房政策立案総括審議官を座長とし,各局部課の総務課長等を構成員とする「法務行政におけるAI技術活用等検討プロジェクトチーム」を立ち上げたところです。
 AIについては様々な活用方法があり,頭を柔らかくして活用すべきであると思っています。また,ビッグデータの問題もあります。検討が始まったばかりですが,そうしたことを総合的に,今後,本プロジェクトチームにおいて,法務行政におけるAI技術の活用方法を検討して,その検討結果を今後の施策の立案等に活かすということを考えており,法務省としてもAI技術の活用・推進に取り組んでまいりたいと考えています。

AALCO年次総会に関する質疑について

【記者】
 法務省が,AALCOの年次総会に関与する意義というものについては,どのように考えていらっしゃるでしょうか。

【大臣】
 AALCOというのは,国際法に関するアジア・アフリカ地域唯一の政府間の組織であり,これらの地域から47の国と地域が加盟して,国際法の諸問題について幅広く審議を行うものです。これは司法外交をアピールする絶好の機会ではないかと思っています。
 今次総会では,海洋法,国際貿易・投資法などの国際法に関する諸テーマが取り上げられますが,いずれのテーマにおいても,国際社会における「法の支配」の貫徹について議論されることが期待されています。
 法務省は,国の内外を問わず,「法の支配」を浸透させる「司法外交」の取組を積極的に行っており,この取組をAALCOにおいてアピールし,日本がこの分野において国際社会の中でリーダーシップを発揮していく姿勢を示す,そういった大きな意義があろうかと思います。
 加えて,国連のコングレスへの参加の呼びかけという意義もあります。我が国は,2020年に,犯罪防止・刑事司法分野における国連最大の会議である,第14回国連犯罪防止刑事司法会議,通称京都コングレスを開催すると国連からの決定も得ています。アジア・アフリカ諸国から外務大臣・法務大臣等が集まるこの機会を利用し,京都コングレスにハイレベルを中心とした積極的な参加を呼び掛けていくという意義があります。
 また,このAALCOには,法務大臣,司法長官などが各国から集まります。そうした機会を最大限活用し,大臣等と二国間会談を行って,法務分野における協力関係を強化してまいりたいと思っています。そうした意味でAALCOは非常に重要であると思っています。

矯正管区主催の駅伝大会における職員死亡事故に関する質疑について

【記者】
 9月の上旬に開かれた東京矯正管区の職員向けのレクリエーションである駅伝競走大会で,参加された管区内の職員の方が日射病で亡くなりました。当日気温が33度を超え,他の参加者の二人も熱中症で搬送されています。今回の事態や運営の在り方について大臣のお考えをお聞かせください。

【大臣】
 そうした報道がなされたことは承知しています。
 東京矯正管区主催の駅伝競走大会において,1名の職員が亡くなられたことは本当に遺憾です。心から御冥福申し上げ,御遺族の皆様にはお悔やみを申し上げたいと思います。
 こうした行事において死者が出る,あるいは重体になるといったことがあってはならず,矯正局からは,本件についてよく検討し,二度とこのようなことが起こらないよう再発防止に向け,実施体制の見直しなど,必要な措置を講じるとの報告を受けていますし,私もしっかりとその旨指示をしています。

司法試験法改正案に関する質疑について

【記者】
 司法試験について,法科大学院の最終学年にも受験ができるよう法改正を行うとの一部報道がありましたが,その件についての年内の展望状況と,その制度変更についての大臣の考えについてお伺いします。

【大臣】
 そうした報道がなされたことは承知しています。これについては,平成27年6月にも公表されていますが,法曹養成制度改革の更なる推進について検討されています。そうした法曹養成制度改革推進会議決定を踏まえ,文部科学省と連携して,他の関係機関等の協力も得ながら,多数の有為な人材が法曹を志望することに向けた様々な取組,そして議論を進めてきたところです。
 御指摘の報道に関しては,そのような取組に関連し,本年の7月の与党文科・法務合同部会において,法曹志望者の経済的・時間的負担の更なる軽減を図るための方策として,法科大学院改革を前提として,法科大学院在学中受験の実現を含む司法試験制度の見直しを早期に行うべきとの指摘がされたことがありました。
 ただ,この点については,様々な検討が必要です。現時点で,法科大学院在学中受験の実現やそれに伴う制度的な措置等について具体的な方針を定めたということはありませんので,今後とも,必要な検討を進めてまいりたいと考えています。
 

(以上)